成長期の膝の痛み「有痛性分裂膝蓋骨」でお困りの方へ。
こんにちは。
愛知県豊明市にある、HK LABOの服部 耕平です。
現在までに整形外科専門病院、デイサービス、トレーナー活動で様々な痛みでお困りの方の施術をさせて頂きました。
姿勢や歩き方などの動作から一人一人の方の痛みに合わせた治療をおこなっております。
今回は「有痛性分裂膝蓋骨」と呼ばれる膝のお皿の疾患について書いていこうと思います。
聞きなれない人も多いかもしれませんが、分裂膝蓋骨と診断を受けて深刻に悩んでいる成長期の学生アスリートもいると思います。
この記事にたどり着いたあなたもその一人、もしくはお子さんが子の痛みで悩まれているのではないでしょうか。
深刻に悩んでしまう原因は実際にお皿の骨が割れているという事に不安を感じたり、手術を勧められているといったところではないでしょうか。
最初に言うと個人的には分裂膝蓋骨で手術は必要ないと考えています。
実際に分裂膝蓋骨と診断を受けて、当院にご来院頂く方もみえますがほとんどの痛みは改善されます。
今回の記事では「分裂膝蓋骨を治したいけど手術はしたくない。」というあなたに向けて原因と治療法を書きたいと思います。
Contents
分裂膝蓋骨ってどんな病気?
分裂膝蓋骨というのは膝のお皿の骨が何らかの理由で2つ以上に分かれることを言います。
(引用 標準整形外科学 第11版 p626)
10代のスポーツ選手に多いと言われています。
原因は不明と言われていますが、痛みの原因はあると考えています。
分裂したお皿は痛みがない場合もありますが、痛みを伴う分裂膝蓋骨を「有痛性分裂膝蓋骨」と言います。
有痛性分裂膝蓋骨の症状
症状は
☑ お皿を押すと痛い。
☑ 走ると痛い。
☑ ジャンプすると痛い。
☑ 立ち上がるときに痛い。
☑ 膝の曲げ伸ばしで痛い。
などです。
痛みの多くは大腿四頭筋と呼ばれる太ももから膝のお皿に付く筋肉に負担がかかる事で痛みを生じます。
大腿四頭筋ってどんな筋肉?
大腿四頭筋と呼ばれる筋肉は骨盤や太ももから膝のお皿を介して、脛骨と呼ばれるすねの骨の上部に付着する筋肉になります。
ボールを蹴るなど、膝を伸ばすときに使われる筋肉になりますが、椅子からの立ち上がりやしゃがむときにも使われる筋肉です。
有痛性分裂膝蓋骨に限らず膝の痛みはこの大腿四頭筋が過剰に使われることで出る痛みが多いので、スポーツ選手はこの筋肉を使いすぎないように、正しい体の使い方をすることが大切になります。
お皿が割れる原因は?
では、ここからは原因不明と言われている有痛性分裂膝蓋骨がなぜ起こるのかを説明したいと思います。
分裂膝蓋骨になりやすい部位は膝のお皿の上部外側と言われています。
僕が今まで見させて頂いた患者のほとんどがこの部位で分裂しています。
(引用 標準整形外科学 第11版 p626)
この部位には先ほど説明した大腿四頭筋の中の外側広筋と呼ばれる筋肉が付着しています。
10代のまだ骨が柔らかい時期にこの外側広筋に負担をかけすぎることで、外側広筋がお皿の上方外側を引っ張ってしまう事で次第に分離してしまうという事です。
大切なのは分裂してしまったから痛みが出ているというわけではなく、分裂部に牽引ストレスが加わることで痛みが出ます。
つまり、分離していても外側広筋からの牽引ストレスさえ減らせれば痛みは改善されるという事です。
牽引ストレスがなくなれば炎症も次第に治まるため、押したときの痛み(圧痛)も次第になくなります。
なぜ外側広筋に負担がかかるの?
ここがとても重要な部分です。
四頭筋の一部である外側広筋になぜ負担がかかってしまうかということです。
筋肉は基本的には引っ張られるとそれ以上引き延ばされないように縮もうとします。
これをエキセントリック収縮と言ったりしますが、この時の力が一番強いと言われています。
これが外側広筋に起こっている状態が膝のお皿には一番負荷が加わります。
ではどうなったら外側広筋にエキセントリック収縮が起こるかという事ですが、これは太ももが外に捻じれると起こります。
簡単に言うとO脚のようなイメージですね。
太ももが外に捻じれるとこの外側広筋が引き伸ばされるため、それ以上引き延ばされないようにエキセントリック収縮が起こります。
そうなるとその力は、外側広筋が付着している膝蓋骨の上方外側に牽引力となって加わります。
これが10代のまだ柔らかい骨に繰り返し起こることで亀裂ができ始め、膝蓋骨が分裂すると考えています。
有痛性と無痛性
正直、分裂膝蓋骨の原因自体はまだ完全にはわかっていいないと言われています。
もしかしたら遺伝的な要素もあるかもしれません。
ただ、分裂膝蓋骨自体は正直それほど問題ではありません。
問題は有痛性という部分です。
分裂膝蓋骨には痛みの無い無痛性のものもあります。
お皿が分裂していてもこの無痛性の場合それほど問題視されません。
実は分裂しているけど気付かずに生活をしている人もいると思います。
分裂していても無痛性のものもあるという事は分裂している事で痛みが出ているわけでは無いという事です。
この無痛性と有痛性を分けるのが先ほど説明した、外側広筋のエキセントリック収縮が過剰に起きているかどうかという部分になります。
この体の使い方を修正できるかが一番のポイントになります。
有痛性分裂膝蓋骨は手術を勧められるケースもありますが、基本的には手術は必要ないと考えているのはこういった背景があるからです。
ほとんどの場合はこのエキセントリック収縮を解決することで痛みはなくなります。
太ももの捻じれ(O脚)の原因
では、なぜ太ももが外に捻じれてしまうのか。
これは太もものの内側にある内転筋と筋肉のお影響によるところが大きいです。
この筋肉が硬くなると太ももが外側に開くようなねじれを作ります。
太ももが外に開くのでO脚のようなイメージですね。
この硬さこそが有痛性分裂膝蓋骨を引き起こす捻じれの原因になるのです。
分裂膝蓋骨の治療法
ここからは治療法ですね。
先程説明したように太ももの内側にある内転筋と呼ばれる筋肉が硬くなって、有痛性分裂膝蓋骨を発症してしまうので、ここの柔軟性を改善してあげれば良いと言う事です。
この筋肉ですね。
この筋肉は股関節の付け根から膝の近くまで付いている長い筋肉になりますが、今回は膝の近くの方をほぐした方が効果が出やすいと思います。
なぜなら有痛性分裂膝蓋骨になる人は太ももの下半分が捻れている人が多いからです。
ここを手を使ってゴロゴロとほぐしていきます。
この筋肉を横断するように矢印の方向に手を動かしながらほぐしていくと良いと思います。
筋膜リリースのローラーでもほぐせるのでローラーを使う人は写真のようにうつ伏せで脚を開いてゴロゴロとローラーを転がすと良いと思います。
こちらも少し膝に近い部分をほぐして頂くと良いと思います。
最初は少し痛みもあるかもしれませんが、筋肉が柔らかくなると次第に痛みも感じにくくなります。
3~5分程度を目安に毎日ほぐして頂くと良いので、有痛性分裂膝蓋骨でお困りの方は一度試してみて下さい。
最後に
今回は有痛性分裂膝蓋骨の原因と治療法について説明しました。
最初レントゲンなどで骨が分かれているのを見ると衝撃を受けるかもしれませんし、まさかこのような筋肉の硬さによって痛みが出ているなんてことは想像できないかもしれません。
ですが、実は痛みの原因は今回説明したように筋肉の硬さなのです。
確かに手術をして分裂した骨を取り除くことも治療の選択肢の一つではあります。
しかし、そういった選択肢を取る前に一度筋肉の硬さや膝の使い方を修正することで手術をしなくても痛みは改善するはずです。
逆にそういった原因が解決されないと手術後も痛みが継続する場合もあります。
なかなか知られていないですが、こういった治療を多くの方に知って頂いて、不要な手術をする方が一人でも減ればと思います。
本日は長文を最後までお読み頂き本当にありがとうございます。
柔道整復師 服部 耕平