変形性股関節症のクライアントさんの治療例
こんにちは。
愛知県豊明市にある、HK LABOの服部 耕平です。
現在までに整形外科専門病院、デイサービス、トレーナー活動で様々な痛みでお困りの方の施術をさせて頂きました。
姿勢や歩き方などの動作から一人一人の方の痛みに合わせた治療をおこなっております。
Contents
はじめに
今回は実際クライアントさんシリーズです。
変形性股関節症のクライアントさんになりますが、最初に動画をご覧ください。
今回はこのクライアントさんの解説をしたいと思います。
今回のクライアントさん
この方は58歳の女性でもともと臼蓋形成不全と診断されている方です。
10年以上前から変形性股関節症で痛みがあり、入院や通院リハビリをしていましたが改善されずに当院を受診されました。
医師には手術の話をされていますが、何とか手術はしたくないという強い希望でこちらにみえました。
この方、なんと京都からご来院頂いています。
症状は
- 歩行時の股関節前方・外側の痛み
- 脚が上がらない為階段が昇れない
- 靴下・靴が履けない
- 股関節が曲がらない
- 横向きで寝られない
などの症状があります。
正直、当院にみえる変形性股関節症の方の中でも重度の区分になると思います。
整形だとどこに行っても手術と言われるのではないかなというレベルです。
ただ本人の強い希望で手術はしたくないという事で治療をさせて頂くことになりました。
では、このクライアントさんをどのように治療しているかをご紹介したいと思います。
このクライアントさんの問題点
様々な症状があるクライアントさんですが、一番の問題は極端な可動域の低下にあると思いました。
他の方だと6つある股関節の動きの中の一つや二つの問題であったりしますが、この方の場合はほぼすべての動きに可動域制限があります。
これ自体は珍しいことではなく重度の変形性股関節症はどの動きにも制限がある方が多いです。
可動域に制限があるとその分、衝撃が分散されずに一部に集中して軟骨や骨がすり減る原因になるので最初の治療としては可動域の改善がメインになります。
筋力低下もあるのでエクササイズも後々必要だとは思いますが、それは可動域が改善されて痛みが減ってからだと考えています。
今回は可動域の中でもこのクライアントさんの特に問題となっている「屈曲」「伸展」の可動域の改善が必要だと感じました。
股関節屈曲制限による問題
では、股関節の屈曲制限によってどのような問題が起きているのかを説明します。
屈曲というのは股関節を曲げる動きの事を言います。
この動きが出来ないと先ほどのご本人の訴えの
- 階段が登れない
- 靴下・靴が履けない
- 股関節が曲がらない
と言うような動きは股関節の屈曲可動域がないと出来なくなります。
可動域以上に動かそうとすれば痛みが出るためこれらの改善には屈曲可動域の改善が必須です。
これに加えてこのクライアントさんは歩行時にも右脚を踏み出す際に骨盤が付いて来ています。
これは屈曲可動域が少ないために脚を踏み出す際に骨盤が代償している状態です。
この動きがあると本来、股関節のクッションになるはずの臀部の筋肉が着地の際に使えなくなるため、股関節の痛みや変形に繋がります。
そのため、この屈曲可動域の改善が歩行時痛の軽減にもなります。
屈曲可動域の改善方法
ここからは屈曲可動域の改善方法を説明します。
まずはどこの筋肉がこの屈曲の制限をしているかという事ですが、これは臀部の筋肉と半膜様筋・半腱様筋と呼ばれる筋肉です。
臀部の筋肉は表層の「大殿筋」や深層の「外旋6筋」と呼ばれる筋肉です。
これらの筋肉はお尻や太ももの後方から屈曲の邪魔をする筋肉になります。
歩行時の踏み出しで骨盤が引っ張られる原因にもなります。
臀部の筋膜リリースの方法
臀部の筋肉のリリースは仰向けで寝た状態でお尻の下にボールを置いてください。
ボールはなるべく硬い方が良いので硬式野球ボール、もしくは軟式の野球ボールがおすすめです。
この状態で体重で圧をかけながらボールをゴロゴロと動かしてください。
外旋6筋も筋膜リリースの方法は同じです。
ただ外旋6筋の方がより深い部分にあるので圧をよりかけて動かしてみて下さい。
うまく緩めていれば写真のように股関節を曲げる動きがやりやすくなるはずです。
半腱様筋・半膜様筋の筋膜リリースの方法
半腱様筋・半膜様筋はこのように太ももの後方に付いている筋肉になります。
さらにその内側にある筋肉も緩める必要があるので紹介しておきます。
太ももの後方に遭って骨盤についているためここが硬くなると骨盤を引っ張ってくるのが分かるかと思います。
この筋肉は少しほぐしこの部分もにくいのですが、直接手でゴロゴロとほぐして頂いても大丈夫です。
手がほぐしづらければ、ボールを太もも裏のやや内側において圧をかけながらボールを動かしてみて下さい。
少しわかりづらいかもしれんせんが、ゴロゴロと筋張ったものを横断する感じがすればほぐせていると思います。
股関節伸展制限による問題
ここからは股関節伸展の問題について説明します。
股関節の伸展は脚を後ろに伸ばすような動きになります。
股関節伸展は歩行時の蹴りだす時に必要な可動域になります。
この動きが制限されたままだと蹴りだしの際に股関節前方や外側の痛みの原因になります。
これは可動域制限がある状態で無理に後方に伸ばすことで前方の組織に負担が加わるという事と、骨盤が後方に回旋することで外側の筋肉にも負担がかかるからです。
このような動きがあるとボール状になっている股関節部分がスムーズに回転しない為、股関節の負担になり変形にも繋がります。
その為、この伸展制限の改善が歩行時痛の改善につながります。
伸展可動域の改善方法
ここからは伸展制限の改善方法を説明します。
まず伸展制限の原因になっている筋肉ですが、これは「恥骨筋」「長内転筋」と呼ばれる内転筋でも上部にある筋肉です。
これらの筋肉は内転筋の中でも前方にある筋肉なので、硬くなると伸展の際に邪魔になります。
その為伸展制限がある場合はこの筋肉を緩めていく必要があります。
恥骨筋・長内転筋の筋膜リリース方法
では、筋膜リリースの方法を説明していきます。
この二つの筋肉は内ももでも上の方にあります。
この部分はローラーでは筋膜リリースしにくいので手でリリースする事をお勧めします。
このように股関節を開いてあぐらをかくような姿勢になります。
この状態で股関節の内側を触ってみて下さい。
この辺りにピーンと張った筋肉を触れられるはずです。
その筋肉を横断するようにゴロゴロとほぐしてみて下さい。
写真は座った状態ですが、完全に寝た状態の方がより分かりやすいかもしれません。
このように筋膜リリースをして緩んでいくと太ももが後方に伸ばしやすくなります。
歩行動画の解説
これらを筋膜リリースした結果どうなったのか、動画の解説をしていきます。
まずは屈曲の変化から。
踏み出す際の骨盤の動きにも変化は出ていますが、画像にして分かりやすいのは着地の際の骨盤の動きだと思います。
骨盤が前方に回ると右脚が着いた際の衝撃をうまく吸収できないために骨盤が突き上げられて必要以上に挙上します。
これと比べると治療後は衝撃を吸収できているため突き上げが少なくなっています。
分かりにくい方は服のしわで見て頂くと分かりやすいかと思います。
次に伸展の変化です。
伸展に関しては歩幅の変化がシンプルにわかりやすいと思います。
治療後の方が若干ですが、歩幅が広がっています。
もう少し細かな骨盤の動きを見ると治療前の方が若干骨盤が後方に引けているのが静止画でもわかるかと思います。
これは伸展可動域が改善されたことで骨盤の代償動作である伸展可動域が減ったと考えられます。
この肩は硬さがまだまだあるので変化としては少しに見えるかもしれませんが、これだけでも歩きやすさや痛みの変化を実感して頂けました。
この方も完治までは長いと思いますが、地道に硬さを取り除くことで痛みは改善されていくと思うので、一緒に頑張っていきたいと思います。
最後に
今回は変形性股関節症の実際のクライアントさんの治療例の解説を行いました。
この方は重度の変形があり脚長差と言って左右の脚の長さも変わるほどです。
どこまで治せるかまだ分からない部分もありますが、個人的には少し時間はかかりますが痛みを無くせるレベルにはなるんじゃないかと思っています。
この方のようにどこへ行っても手術と言われた様な方でも原因を見つけて地道に治療することで手術の回避は可能だと思っています。
これが僕がこの仕事でやりたい事でもあるので、僕も治療が楽しみです。
本日も、最後までお読み頂きありがとうございました。
服部 耕平