変形性股関節症のクライアントさんの治療例
こんにちは。
愛知県豊明市にある、HK LABOの服部 耕平です。
現在までに整形外科専門病院、デイサービス、トレーナー活動で様々な痛みでお困りの方の施術をさせて頂きました。
姿勢や歩き方などの動作から一人一人の方の痛みに合わせた治療をおこなっております。
Contents
はじめに
今回はまた実際のクライアントさんの治療の解説をしたいと思います。
まずはこちらの動画をご覧ください。
今回のクライアントさん
今回のクライアントさんは変形性股関節症と診断を受けている54歳の女性です。
20代の頃から臼蓋形成不全の診断を受けていて、ずっと違和感があったようです。
そして、2,3年前から痛みが強くなり整形を受診したら変形性股関節症の診断を受けました。
それから整形でリハビリを開始しましたが、痛みが改善されず手術を勧められ手術以外の方法を探して当院に来られました。
症状としては
- 歩行時の股関節前方、臀部の痛み
- 階段を上る時の痛み、まっすぐ脚を挙げられない
- しゃがめない
- 椅子からの立ち上がりの股関節痛
- 横向きで寝た時の股関節痛
などがありました。
歩行時痛もありますが、階段を上りで足がまっすぐ上がらないという事でもお困りだったので今回はその解説をしたいと思います。
このクライアントさんの問題点
では、今回のクライアントさんの階段を上る時にどのようになっているかを説明していきます。
この方は脚を挙げる時に太ももを内に捻りながら脚を上げます。
これは「内転」「内旋」と呼ばれる動きになります。
ご本人としてはまっすぐ挙げようとしているのですが、上がらない為、膝が内に入ってしまうという事でした。
これを意識だけで治すという事はなかなか難しいのでなぜこのような動きになるのか、という原因を探していく必要があります。
このクライアントさんの場合は股関節の「屈曲」という動きに極端な可動域制限がありました。
なので、この方はまずは「階段の段差に脚を挙げる可動域が足りていなかった」という事が問題になります。
屈曲可動域制限がある状態でなんとか足を持ち上げようとして骨盤を上方に持ち上げています。
そして、さらに膝を曲げる(屈曲)ことで脚を上げようとしています。
動画の動きはこのように説明が出来ます。
つまり屈曲可動域の改善が根本的な解決になります。
股関節屈曲可動域制限の原因
では、このクライアントさんの可動域制限の原因になっていた筋肉について説明します。
今回は臀部にある「大殿筋」「梨状筋(外旋6筋)」と内腿にある「恥骨筋」「内転筋」という筋肉が屈曲の制限をしていました。
大殿筋や梨状筋は臀部にある筋肉なので硬くなると股関節を曲げる時に後方から邪魔をします。
恥骨筋や内転筋は内ももにありますが、この筋肉も屈曲の制限になります。
これらの筋肉が脚を挙げる邪魔をしていた為、動画のような脚の挙げ方になってしまうという事です。
この動きを無意識でも治すためにはこれらの筋肉を筋膜リリースで緩める必要があります。
筋膜リリースの方法
では、臀部の筋肉と内ももの筋肉に分けて筋膜リリースの方法を説明していきます。
臀部の筋膜リリースの方法
臀部の筋肉のリリースは仰向けで寝た状態でお尻の下にボールを置いてください。
ボールはなるべく硬い方が良いので硬式野球ボール、もしくは軟式の野球ボールがおすすめです。
この状態で体重で圧をかけながらボールをゴロゴロと動かしてください。
外旋6筋も筋膜リリースの方法は同じです。
ただ外旋6筋の方がより深い部分にあるので圧をよりかけて動かしてみて下さい。
うまく緩めていれば写真のように股関節を曲げる動きがやりやすくなるはずです。
恥骨筋・長内転筋の筋膜リリース方法
では、筋膜リリースの方法を説明していきます。
この二つの筋肉は内ももでも上の方にあります。
この部分はローラーでは筋膜リリースしにくいので手でリリースする事をお勧めします。
このように股関節を開いてあぐらをかくような姿勢になります。
この状態で股関節の内側を触ってみて下さい。
この辺りにピーンと張った筋肉を触れられるはずです。
その筋肉を横断するようにゴロゴロとほぐしてみて下さい。
写真は座った状態ですが、完全に寝た状態の方がより分かりやすいかもしれません。
こららの筋肉もしっかりと緩められると先ほどと同様に股関節が曲がりやすくなります。
動画の解説
これらの筋膜リリースを行った結果どうなったのかを動画解説を行います。
治療前の動画では股関節がうまく動かないため骨盤を挙上、前方回旋させて脚を挙げようとしています。
治療後は屈曲可動域が少し改善されたため骨盤ではなく股関節の屈曲を使って脚を挙げることが出来ています。
その為、太ももの内の捻じれ(股関節内旋)が少なくなり膝が治療前に比べて前を向いています。
ご本人も脚が上げやすくなったと喜んでもらえました。
股関節内転・内旋の影響
脚の挙げやすさとは別ですが、今回の股関節内転、内旋の影響について書きたいと思います。
今回の方もそうなのですが変形性股関節症の方は歩き方も股関節が内転内旋位になっている方が多いです。
股関節が内転内旋位になると大なり小なりこのように前方から見たときに大腿(太もも)と下腿(スネ)がこのようにくの字に曲がります。
この状態で上から体重がかかると角度はさらに強くなります。
この時に曲がらないように支えようと筋肉は通常よりも力を発揮するため痛みが出ることがあります。
時々、膝や股関節に力が入らずにガクッとなる方がみえるかもしれません。
これはこの状態の方が勢いよく荷重をかけた時に筋肉でのブレーキが間に合わない為に起こるものと考えられます。
そのため股関節や膝に痛みがある方はこの形を戻すことはとても重要になります。
今回は屈曲可動域の改善後は治療前よりも大腿と下腿が一直線になっています。
これは分かりやすいと思います。
よく見ると体幹の倒し方や左手の挙げ方も変化が出ているのが分かると思います。
これは左足が挙げやすくなったおかげでほかの部分でバランスを取らなくてもよくなった結果だと思います。
この修正によって股関節の必要以上に筋肉が力を使う必要が無くなり痛みも減ったと考えています。
最後に
今回は変形性股関節症の方の階段の上りの動きの改善方法を解説しました。
変形性股関節症は階段や靴下を履けないなど股関節の屈曲の制限が原因の問題に多く遭遇します。
どうにもならないと思われている方も多いですがそうではありません。
屈曲可動域の原因を見つけて地道に改善することで元通りに近いところまで動きが戻ることもあります。
この方も可動域制限はまだまだあるため完治までは少し時間がかかりますが、手術をしなくても大丈夫だと思っています。
少しでも早く完治して卒業できるように一緒に頑張っていこうと思います。
本日も、最後までお読み頂きありがとうございました。
服部 耕平