研究所

HOME > 研究所 > 下肢の治療 > オスグッド(成長痛)・ジャンパー膝 > 成長期に膝が痛いオスグッド。安静だけで治らない理由

成長期に膝が痛いオスグッド。安静だけで治らない理由

こんにちは。

愛知県豊明市にある、HK LABOの服部 耕平です。

現在までに整形外科専門病院、デイサービス、トレーナー活動で様々な痛みでお困りの方の施術をさせて頂きました。

姿勢や歩き方などの動作から一人一人の方の痛みに合わせた治療をおこなっております。

 

はじめに「なぜ成長期の膝の痛みは長引くのか?」

 

活動やクラブチームで頑張る中高生に多い膝の痛み。

整形外科で「オスグッド」と診断され、「安静にしてください」と言われたけれど、

しばらく休んでも痛みが戻る…そんな経験はありませんか?

 

実は、オスグッドは安静だけでは治らないケースが非常に多いのです。

この記事では、成長期の体の特徴と、痛みを繰り返さないための考え方を

リハビリ・トレーニングの専門家であるHK LABOが解説します。

 

オスグッドとは?どんな状態?

 

正式名称:オスグッド・シュラッター病

多くは成長期(10〜15歳)に発症

脛骨粗面(膝の下の骨の出っ張り)に痛みや腫れが出る

 

原因のしくみ

 

太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)が硬くなり、

ジャンプやダッシュのたびに膝下の骨を強く引っ張ることで炎症が起きます。

 

特に、身長が急に伸びる時期は筋肉の柔軟性が低下しやすく、

骨の成長スピードに筋肉が追いつけなくなるために起こります。

 

安静にしても治らない3つの理由

 

① 股関節がうまく使えていない

 

太ももの前の筋肉ばかり使っていると、膝下の引っ張り(脛骨粗面への負担)が強くなります。

股関節やお尻の筋肉(殿筋)が働くことで、本来はその負担を分散できるのです。

 

② 太ももの前(大腿四頭筋)の柔軟性だけに注目している

 

「ストレッチしても良くならない」というケースでは、

筋膜や滑走の問題で伸びているようで動いていないことが多いです。

表面の筋肉だけでなく、筋膜リリースで深層の動きを出すことが重要です。

 

③ 動作のクセが変わっていない

 

痛みが落ち着いても、ジャンプや走る動作で

● 膝が内側に入りやすい(ニーイン)

● 骨盤が後傾している

● 膝の曲がる角度が大きい(ダッシュやジャンプの際に)

などのクセが残っていると、

再発するリスクが高くなります。

動作を動画で確認し、股関節から動くパターンを再学習する必要があります。

 

成長期に必要なのは「動かし方の修正」

 

安静や湿布というのは炎症を抑えるための一時的な手段にすぎません。

 

痛みを抑えるためには必要なことでもありますが、根本解決にはなりません。

根本的な改善には、使えていない筋肉の使い方を覚えて、動かし方を変えるトレーニング(運動療法)が必要です。

 

各フェーズでやることはこのようになります。

 

段階 アプローチ内容 目的
① 痛み期 筋膜リリース・軽いアイソメトリック 炎症を抑え、可動性を回復
② 改善期 股関節・殿筋・ハムストリングス活性化 負担を分散させる
③ 再発予防期 動作分析+フォーム修正 膝を守る動きの再学習

 

HK LABOの考える「再発しない動作」

 

オスグッドを繰り返す原因の多くは、

動かし方のクセが変わっていないことにあります。

痛みが一度落ち着いても、膝を中心に使う動きが続くと、

ジャンプ・ダッシュ・方向転換などで再び同じ部位に負担がかかります。

 

HK LABOでは、「膝を使わないで動く」ではなく、

膝に負担をかけないように全身で動くことを目的に、

股関節・骨盤・体幹・足部の連動を再教育していきます。

 

膝に負担をかけないためのポイント

 

  • 骨盤の前傾で股関節を使えるポジションにする
  • 膝の柔軟性と筋膜の滑走性を改善して、力の逃げ道をつくる
  • スクワットやスクワットジャンプで殿筋を使えるようにする
  • アンクルホップで腓腹筋・アキレス腱の弾性を使えるようにする

 

これらを組み合わせることで、
膝の筋肉(大腿四頭筋)に頼らなくても走ったり跳んだりできるようになります。

最終的には、負荷を上げてもフォームが崩れずに耐えられる身体を作ることがゴールです。

 

スクワットで「殿筋主導の動き」を覚える

🔹 目的

膝の曲げ伸ばしではなく、股関節から体を沈める「ヒップ主導動作」を身につける。

 

🔹 やり方

  1. 足を肩幅に開き、つま先はやや外へ。
  2. 胸を張って骨盤を軽く前傾。
  3. 骨盤を倒してお尻を突き出すように体を沈める。
  4. 太ももが地面と平行になる手前で止まり、ゆっくり戻る。
    (10〜15回×2〜3セット)

 

🔹 ポイント

  • 膝を前に出さず、お尻を引く意識。
  • 足裏の重心は「母趾球〜かかと」へ均等。
  • 立ち上がる時にお尻(大殿筋)を締める。

 

💡 意識のコツ

→ 「膝を曲げる」ではなく「骨盤を倒す」
→ 「座るように沈む」ではなく「スキーのジャンプのイメージ」

 

🔹 効果

  • 大腿四頭筋の過剰収縮を防ぎ、殿筋・ハムストリングスの連動を促す
  • 骨盤前傾のポジションを覚える
  • 膝前面のストレスを軽減し、ジャンプ動作のフォーム改善につながる

 

スクワットジャンプで「力の出し方」を再学習

 

🔹 目的

 

股関節→膝→足首の三関節連動(トリプルエクステンション)を自然に使えるようにする。

 

🔹 やり方

 

  1. スクワットの姿勢(骨盤を倒してお尻を突き出した姿勢)をとる。
  2. そこから股関節・膝・足首を同時に伸ばすようにジャンプ。
  3. 着地は静かに、膝と股関節を同時に曲げて吸収する。(5〜10回×2セット)

 

🔹 ポイント

 

  • 膝からではなく、股関節から伸び上がる意識。(足裏で地面を押す)
  • 着地の時に「お尻→太もも→ふくらはぎ」の順で衝撃を逃がす。
  • 音が大きくならないように静かに着地する。

 

💡 意識のコツ

→ 「跳ぶ」ではなく「地面を押す」
→ 「太もも」ではなく「お尻と股関節」で上がる

 

🔹 効果

 

  • 殿筋の反応速度を高め、パワー発揮と衝撃吸収を両立
  • 動作の中で“力を抜くタイミング”を学習
  • 安定したジャンプ・着地フォームが習得できる

 

アンクルホップで「足のバネ」を取り戻す

 

🔹 目的

腓腹筋・ヒラメ筋・アキレス腱の弾性を使い、膝ではなく足首で反発を生み出す。

 

🔹 やり方

 

  1. つま先を正面に向け、両足を揃えて立つ。
  2. 膝をほとんど曲げず、足首の反発だけでリズミカルにジャンプ。
  3. 腕を振る反動も使ってできるだけ高く跳ぶ。(20回×2〜3セット)。

 

🔹 ポイント

 

  • 膝は伸ばしたまま。
  • ふくらはぎで跳ねるのではなく、「アキレス腱のバネ」を意識。
  • 上半身はリラックスし、体幹でバランスを取る。

 

💡 意識のコツ
→ 「筋力で跳ねる」ではなく「バネで弾む」
→ 「足首で押す」より「足首で受ける」

 

🔹 効果

 

  • 腓腹筋・ヒラメ筋・アキレス腱の弾性エネルギーを活用
  • ジャンプ・ダッシュ時の膝の負担を軽減
  • 下肢の連動性(股関節→膝→足首)を高める

 

動きが安定したら「負荷に負けない筋力」

 

動作が正しくなってきたら、次のステップはフォームを崩さずに力を発揮できる筋力をつけることです。

フォームが悪いまま負荷を増やすと、

せっかく覚えた使い方が崩れ、また膝への負担が戻ります。

 

HK LABOでは、

  • 自重トレーニングから徐々にチューブ・ウェイトを導入
  • 動作分析を使って「使い方が変わらない負荷設定」を行う
  • 殿筋・ハムストリングス・内転筋をバランスよく強化

 

「正しい動かし方で出せる力」=再発しない身体。

これが私たちの考える“使える筋力”です。

 

最後に

今回はオスグッドの根本改善や再発予防には何が必要なのかという事を解説しました。

もちろん大腿四頭筋などの膝の筋肉が硬くなっていたり、

筋膜の滑走不全があればそれは改善する必要があります。

 

しかし、それだけでは根本解決は難しいですし、一見治ったように見えても再発の可能性があります。

そのためには

● 膝ではなく股関節(殿筋)主導の動作の獲得

● スクワット、ジャンプ、アンクルホップで全身の連動性を再教育

● 負荷を上げてもフォームが崩れない筋力

これらが必要になります。

 

オスグッドで長い間痛みが改善されなかったり、

再発を繰り返している方はこれらのどれかが不足していると思います。

今回はこのような記事でスクワットやトレーニングの説明も行いましたが、

実際にはやれているつもりでやれていないことも多々あります。

 

その場合は独学では難しいので専門家にフォームをチェックしてもらい、

正しいフォームを習得することで改善に向かうと思うので、ぜひ専門家にみてもらって下さい。

 

今回も長文を最後までお読み頂きありがとうございました。

 

HK LABO  服部耕平

一覧へ戻る

TOPへ