「膝を伸ばすと膝前方が痛くなる」とお困りの方へ。
こんにちは。
愛知県豊明市にある、HK LABOの服部 耕平です。
現在までに整形外科専門病院、デイサービス、トレーナー活動で様々な痛みでお困りの方の施術をさせて頂きました。
姿勢や歩き方などの動作から一人一人の方の痛みに合わせた治療をおこなっております。
今回は膝を伸ばした時に前方に痛み出る方に向けて、治療法を書いていきます。
この症状はオスグッド、分裂膝蓋骨などのスポーツ障害から変形性膝関節症や半月板損傷、膝の手術後など幅広い方に当てはまると思います。
「成長痛だから」「骨が変形しているから」と諦めている方もみえるかもしれませんが、意外と原因は筋肉にあることが多いです。
今回はどの筋肉が膝を伸ばす邪魔をしているのか、どのようにほぐしたらいいのかという事を説明していきます。
Contents
膝関節ってどうなってるの?
まずは膝関節について簡単に説明します。
膝関節は太ももの骨の「大腿骨」とすねの骨の「脛骨」と膝のお皿と言われる「膝蓋骨」と呼ばれる3つの骨からできています。
大腿骨は脛骨と関節する部分は内側と外側にそれぞれ丸みを帯びています。
逆に脛骨側は内側、外側に少しくぼみが出来ていて大腿骨の丸みを受け止められるような形になっています。
伸ばすにも曲げるにもこのくぼみに大腿骨がはまることでスムーズな動きを可能にしています。
膝関節ってどんな動きがあるの?
次に膝関節の動きについて説明します。
膝関節は「屈曲」と「伸展」、「内旋」「外旋」と呼ばれる4つの動きがあります。
まず屈曲は膝を曲げる動きを言います。
逆に伸展は膝を伸ばす動きになります。
この二つは可動域の大きな動きになります。
それに比べると「内旋」「外旋」は可動域は小さな動きになります。
「内旋」は脛骨と呼ばれるすねの骨が内に向く動き。
「外旋」は逆にすねの部分が外側に向くような動きの事を言います。
内旋、外旋はどちらかというと補助的な動きになりますが、スムーズに屈曲、伸展を行うためにも大切な動きになります。
なぜ膝を伸ばすと痛くなるの?
ここからは痛みの原因について説明します。
今回のケースでは膝の前にも後ろにも痛みが出るケースがありますが、膝の前方に痛みが出るという前提で説明していきたいと思います。
これはシンプルに多いのは伸展の可動域が足りていないという事です。
どういう事かというと、正常であれば膝を伸ばすと太ももとすねの部分が一直線になるまで膝は伸びると思います。
これを伸展可動域0度と言います。
しかし、膝前方に痛みが出る方はこの伸展が0度までいきません。
目で見てわかるほど伸ばせない方もみえれば、一見膝が伸びているように見えても1度、2度のレベルで伸びていないという方もみえます。
膝の前方には「膝蓋下脂肪体」と呼ばれる脂肪があります。
スムーズに膝が伸びればこの脂肪体が挟まれるようなことはありません。
しかし、可動域制限がある状態で無理やり膝を伸ばそうとすると大腿骨や脛骨にこの脂肪体が挟まれます。
脂肪体は痛みを感じる神経が多く存在するので、挟まれるストレスによって痛みが生じます。
これが膝を伸ばそうとすると膝前方に痛みが出る原因です。
もちろん膝前方には脂肪体以外の組織もあるため脂肪体の痛みが全てとは思っていません。
しかし、膝が伸びないことによって起こる痛みは多くあります。
そのため、膝の伸展の邪魔をしているのはどの組織なのかを見つけて、解消していくことが今回の膝前方の痛みの解決への近道になります。
パテラセッティングで痛みは治る?
膝のリハビリで代表的なリハビリに「パテラセッティング」というリハビリがあります。
膝を伸ばした状態で膝裏にタオルを丸めて置き、そのタオルをつぶすように膝を伸ばすリハビリです。
主に手術後などに内側広筋という膝の内側の筋肉を鍛えるためのリハビリとして使われます。
しかし、今回のように伸展時の痛みのある方がリハビリとしてやられているケースもよく遭遇します。
個人的には伸展時痛がある方にはパテラセッティングは向いていないと考えています。
伸展時痛があるという事は今回のように脂肪体にストレスが加わっている可能性があります。
その状態で何度もパテラセッティングを行うと脂肪体へ繰り返しストレスが加わるため、むしろ痛みが強くなる場合があります。
しかも、痛みがある状態でパテラセッティングを行っても力が入らずに内側広筋の訓練としての効果は弱いと考えています。
その為、パテラセッティングを行う前は伸展がスムーズに出来るようにしておく必要があります。
膝を伸ばす邪魔をしているのはどの筋肉?
では、実際に伸展の制限をしているのはどの筋肉になるのでしょうか。
これは一つではありません。
「内側ハムストリングス(半腱様筋・半膜様筋)」「外側ハムストリングス(大腿二頭筋)」「内側腓腹筋」「外側腓腹筋」「膝窩筋」の5つに加えて、今回注目する「大内転筋」の6つになります。
先に挙げた5つは膝の裏側に付く筋肉になりますので、硬くなると伸展の制限になるのはイメージしやすいと思います。
膝の裏から反対に引っ張っているという事ですね。
その為、全ての筋肉の硬結を取り除く必要がありますが、今回は見逃しやすいと感じている「大内転筋」に注目します。
大内転筋は骨盤から大腿骨の内側に付いている筋肉になります。
さらにその中で膝の近くに伸びているこの部分。
大内転筋のこの付着部が意外と伸展の邪魔をします。
正直、論文などではっきり「伸展制限になる」と記載がある論文は見つけられないのですが臨床では大きく影響していると感じています。
うまく表現できませんが、大腿骨が下に下がりにくくなるというイメージです。
実際に臨床でリリースをさせて頂いても、リリース後は大腿骨が下がりやすくなります。
では、どのようにこの「大内転筋」を緩めていくのかを次の章で説明していきます。
どうやって治療したらいいの?
「大内転筋」のリリースの方法ですが、それほど難しくありません。
太もも内側の膝に近い部分ですね。
この部分にコリコリと筋張っている筋肉があると思います。
少し強めに押して探す必要があるかもしれませんが、上下に手を動かしながら横断するようにこの部分をリリース(ほぐ)していきます。
筋膜リリースのローラーをお持ちの方はこのように内ももに当てて、転がしてみて下さい。
リリースした後にもう一度膝を伸ばして、少しでも軽減していたらリリースが出来ている証拠です。
膝がきれいに伸びるためには先ほど挙げた5つの筋肉の硬さも関係しているため、これだけであ解決するわけではありません。
長い年月痛みが続いていたり、伸展制限が強くだれが見ても膝が曲がっているような場合には全ての筋肉をリリースする必要もあります。
しかし、そのような方でも順番にリリースが出来れば伸展制限はほとんどの場合で改善されます。
手術しかない、と言われるような方でも時間をかけてリリースしていけば膝は伸びるので諦めずに試してみて下さい。
他の筋肉のリリース方法はまた機会があれば説明したいと思います。
まとめ
今回は膝を伸ばした時に膝前方に痛みが出るという方に向けて改善方法を説明しました。
今回この内容を書こうと思ったのは意外とこのような痛みが病院や整形で解決できていないのではないかと思ったからです。
「膝を伸ばすと痛い」といった訴えだけだと、リハビリをしてもらえないという声も聞きます。
半月板の手術後にある程度治ったからリハビリが終わりになったという声も聞きます。
そういった方の少しでも役に立てればと思い、今回は書かせてもらいました。
膝伸ばした時というお話ですが、日常では歩行時や階段を降りる時、立ち上がり動作など、膝を伸ばす場面はたくさんあります。
このようなときの痛みでお困りの方も一度試してみて下さい。
今回も6つ挙げた筋肉の中から一つをピックアップしただけなので、改善方法はこれだけではありません。
他の方法はまた機会があれば別でお伝えしたいと思います。
今回の方法で痛みが改善されなくても他にも方法はあるので諦めずに専門家に診てもらってください。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
服部 耕平