【豊明市】歩くとふらつく・よろける方へ|重心の準備と前庭トレーニングで安定歩行

こんにちは。
愛知県豊明市にある、HK LABOの服部 耕平です。
現在までに整形外科専門病院、デイサービス、トレーナー活動で様々な痛みでお困りの方の施術をさせて頂きました。
姿勢や歩き方などの動作から一人一人の方の痛みに合わせた治療をおこなっております。
今回はいつもと少し違い、最近、歩くとふらつく、最初の一歩が怖い、将来が少し不安
そう感じている方に向けての内容になります。
筋力トレーニングは大切ですが、筋力だけでは安定が戻り切らないことがあります。
本記事では、専門用語をその都度わかりやすく説明しながら、今日から自宅でできる具体策まで流れでお伝えします。
Contents
筋力だけでは安定しない理由(網様体・前庭・小脳の役割)
歩行の安定には、脚の力だけでなく、体幹と骨盤まわりの「支え」が欠かせません。
ここでいう「支え」とは、腹圧と体幹筋が生む適度な筋の緊張で、骨盤と背骨を歩行中も揺れにくく保つ力のことです。
この支えを整えているのが網様体(もうようたい)です。
網様体(もうようたい)は脳幹(のうかん)の中央にある調整役で、
歩いている最中に体幹や姿勢を保つ筋肉がいつ・どれくらい働くかを無意識に整えます。
言い換えると、網様体は歩行中の“自動のスイッチャー”として、立位・歩行中に体幹・姿勢筋の活動量と順番を無意識に配分し、
踏み出しや着地でも軸がぶれないように調整します。
ここが弱いと、脚力があっても動きは不安定になり、思い通りの歩きになりません。
もう一つが前庭(ぜんてい)です。



ここがそろって初めて、ふらつきの少ない歩行になります。
一歩を決める「重心の準備」(先行随伴性姿勢調整=APA)
「考えすぎの歩き」から「自動の歩き」へ
本来、歩きは“考えてやる動作”ではありません。
私たちの体には歩行の基本パターンが備わっており、脊髄の歩行リズム装置と脳幹の網様体(もうようたい)が協調して、
体幹や姿勢の筋を無意識に働かせます。
ここに小脳が常に誤差を見張るようにフィードバックをかけ、
踏み出す直前には先行随伴性姿勢調整(APA)が自動で立ち上がって、重心移動や力の入れ具合を細かく整えます。
この機能は考えて行うわけではありません。
つまり安定した歩行は、網様体の自動的な姿勢づくりと小脳の微調整、そしてAPAの先回りが一体になって生まれます。
一方で、正しく歩こうとしたり、不安が強い場面で大脳皮質(考える脳)を使って歩きを細かく操作しようとすると、
この自動の仕組みを邪魔してしまうことがあります。
歩幅が縮み、速度が落ち、力みが増えて、かえって不安定になる——これが「考えすぎの歩き」です。
だからこそ必要なのは、意識して動く(歩く)ことではなく、
歩行に関わる中枢(網様体・前庭・小脳)に適切な刺激を入れて活性化し、“自動の流れ”を思い出させることです。
網様体には左右交互の運動で体幹の支えを引き出し、前庭には頭部の小さな動きと視線固定で入力を整え、
小脳には一定のリズムや外からの合図で誤差修正を働かせる。
こうした刺激づけを重ねることで、考えなくても安定して歩ける状態へ戻りやすくなります。
次の章で、網様体に届くクロスクロールと、視覚・前庭に届く視線固定+小さなゆさぶりの具体的なやり方を紹介します。
網様体・視覚・前庭系を鍛えるトレーニング
もちろん筋力は必要ですが、その筋力をどのように使うかは指示を出している脳や神経を機能が関わってきます。
そのため、網様体や視覚、前庭系のトレーニングを取り入れて無意識のAPAや体幹の安定を使えるようにしていく必要があります。
網様体のトレーニング「クロスクロール」
網様体(もうようたい)は脳幹の中にある“自動の調整役”で、
歩いている間に体幹や姿勢の筋肉がいつ・どれくらい・どの順番で働くかを無意識に整え、
踏み出しや着地でも軸がぶれないようにしてくれます。
これがうまく働くと、腹部まわりの**適度な緊張(体幹の支え)が入りやすくなり、
骨盤と胸郭の動きが気持ちよくつながって、一歩を出す直前に重心を先に移す準備(APA)も自然に出やすくなります。
やり方
1,立位または座っても大丈夫です。
2、身体を捻りながら右膝(右足)と左肘(左手)を近づけるように動かします。
3、対角の膝(足)と肘(手)を近づけたらそれを戻します。
4,戻したら次は左膝(足)と右肘(手)を同じように体を捻りながら近づけます。
5、この左右交互の動きを、リズムよく繰り返します。
これを60秒~90秒×2~3セットやってみて下さい。
なれたらもっと増やしても大丈夫です。
特徴と効果
脳の活性化:右腕×左脚、左腕×右脚の交叉運動(クロスクロール)で左右の脳半球の連携を引き出します。
集中しやすさの向上:左右の連携が高まることで、注意の切り替えや学習がしやすい状態づくりに役立ちます。
姿勢の改善:体幹を軽くひねる要素が入り、バランス感覚と姿勢の整いに寄与します。
網様体へのねらい:歩行中に体幹・姿勢筋がいつ・どれくらい・どの順番で働くかを無意識に整える回路(網様体)を呼び起こし、
「踏み出し前の重心準備(APA)」が出やすくなります。
ポイント
リズミカルに:リズミカルに手足を交互に動かすのが特徴。
フォームのコツ:足元を見すぎず、肩の力を抜いて動く。終わって歩き出すと、最初の一歩が出やすい・ぶれにくい感覚が目安になります。
安全:ふらつく日は座位から。めまい・痛みがあれば中止し、安全性を考慮して無理のない範囲で行ってください。
視覚・前庭系トレーニング
前庭(ぜんてい)は耳の奥にある平衡のセンサーで、頭がどちらへ・どれくらい動いたかを感じ取ります。
その情報は前庭神経核(ぜんていしんけいかく)という司令所に集まり、目の動きや姿勢筋へ素早く指令が出ます。
頭を動かしても目標物をくっきり見続けられる仕組みをVOR/前庭動眼反射(ぜんていどうがんはんしゃ)**と言います。
VORを練習すると、「視線がぶれない=足元に頼り過ぎない」状態が作られ、歩行中のふらつきが減ります。
やり方
1、目印を準備する。壁に視線の目印になるようなものを貼る。(後で説明しますが文字だと良い)
2,目印を見たまま、頭だけを小さく左右に振る。
3,上下も同様に視線を動かさずに頭を動かす(うなずくような動き)
4、慣れたらバランスディスクに乗ったりウォーターバッグを持ちながら外乱状態(不安定)で行う。
これを30〜45秒×2セット程度。
合計2〜3分にとどめ、毎日コツコツやってみて下さい。
慣れたら1日2〜3回に分けて実施すると、こうかがでるまでがはやくなり。
どこに刺激が入る?
頭の小さな動き → 前庭器 → 前庭神経核へ入力が上がる→ VOR(目の安定)と 前庭脊髄反射(姿勢の微調整)が働く。
ディスク/水のゆさぶり → 足底・足関節の感覚と体幹の小さな張りも同時に動員され、視覚・前庭・体性感覚の連携が高まる。
特徴と効果
視線のブレを減らす:VORの練習で、歩行中も遠くの一点を保ちやすくなる。
前庭神経核を賦活:小さな頭部運動+外乱で、前庭→姿勢筋の即時調整が働きやすい。
足元ばかり見ない歩行へ:視覚依存の偏りが減り、腕振り・骨盤回旋が自然に戻りやすい。
第一歩の安定:視線が安定すると**重心の準備(APA)**が出やすく、踏み出し・着地のぶれが減る。
ポイント
首を動かす速さはぼやけない速さ:視標が読める速さを上限に。速すぎると逆効果。
活性化/落ち着かせるの使い分け:
すぐ気持ち悪くなる → 振り幅を小さく・時間短く・安定床で。
物足りない → バランスディスク → ウォーターバッグの順に少しずつ外乱を追加。
安全:めまい・吐き気・頭痛が強く出たら即中止。初回は必ず壁や手すりの近くで。
仕上げの確認(30秒):終わったら遠くの一点を見たまま10歩。腕振りが自然・歩幅がそろうなら狙い通り。
最後に
今回は歩行や日常でふらつきやよろつくが気になる方にむけてのトレーニングを説明しました。
冒頭でも言ったように筋力も必要です。
そもそもの筋力が弱ければ支える力や踏んばる力が弱くなるので筋力があるに越したことはありません。
しかし、それは皆さんなんとなくわかっていることだと思います。
ただ身体の安定性を高めるためにはそれだけでは不十分という事ですね。
筋肉に指令を出しているのは脳で、その中でも身体の安定性を高めるというのは無意識化で行われている事です。
そのため、歩いている時に意識して体幹を固めたり重心移動を意識するというのはかなり難しいです。
それよりも安定性を高めたり、無意識で動いている脳の部分に刺激が入るようなトレーニングをして、
前庭、網様体、小脳などの安定性を高めるために指示を出している部分を活性化することが大切になります。
それができれば普段の動きでも無意識でも安定性が高まって、ふらつきやよろつきが少なくなってきます。
こういったトレーニングは効果が出るまで、少し時間はかかりますが、
このトレーニングをスムーズに出来たり、安定感が出てくるころには日常の安定感も変わってくるはずなので、
頑張って継続してやってみて下さい。
豊明市周辺でのご相談・体験について
HK LABO(愛知県豊明市二村台)は、歩行の不安・ふらつきに対する評価と個別トレーニング計画を提供しています。
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柔道整復師 服部 耕平