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オスグッドでお困りの方へ。

こんにちは。

愛知県豊明市にある、HK LABOの服部 耕平です。

現在までに整形外科専門病院、デイサービス、トレーナー活動で様々な痛みでお困りの方の施術をさせて頂きました。

姿勢や歩き方などの動作から一人一人の方の痛みに合わせた治療をおこなっております。

 

初めての研究所の更新になりますが、今回はスポーツをしている学生に多いオスグッド・シュラッター病(以下 オスグッド)について書いていきたいと思います。

ご本人が痛みでお困りなのはもちろん、スポーツが出来ない子供を見ているとどうにかしたいと思われる親御さんも多いと思います。

そのような方に少しでも正しい治療法を知って頂ければ幸いです。

 

 

Contents

膝の構造

膝というのは太ももの骨の「大腿骨」とすねの骨「脛骨」とお皿と言われる「膝蓋骨」という3つの骨から出来ています。

この3つの骨が転がったり、滑ることで膝はうまく曲げ伸ばしが出来るようになっています。

逆に横の動きは靭帯に補強されて固定されているため、横にはあまり動かないようになっています。

 

膝の代表的な筋肉で今回、オスグッドにかかわる筋肉を紹介させてもらいます。

 

大腿四頭筋」という太ももの前面についている筋肉ですが、この筋肉は膝を伸ばす作用と階段を上る時などに膝を曲げて踏んばる時に使われる筋肉です。

この筋肉は脛骨上部の「脛骨粗面」という部分についています。膝のお皿をまっすぐ下にたどると少しボコっとしている部分があると思います。そこが「脛骨粗面」という名称になっています。

細かな名称は必要ありませんが、オスグッドはこの大腿四頭筋が付着する脛骨粗面のトラブルという事で簡単に解剖学を紹介させて頂きました。

 

オスグッドとは

オスグッドというのは、10代前半の男子に多いと言われている膝のスポーツ障害で、お皿の下の脛骨粗面に痛みが出ます。

バスケ、バレー、サッカーなどのジャンプ動作が多いスポーツに多いと言われていますが、走る時に膝が痛いなど、様々なスポーツで発症します。

なぜ脛骨粗面に痛みが出るかというと前述したようにこの脛骨粗面には大腿四頭筋と言われる筋肉が付着しています。

ジャンプ動作や走ることでこの大腿四頭筋が収縮して過度に骨が引っ張られる事で痛みが出たり骨の変形が起こります。

(画像引用)日本整形外科学会
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/osgood_schlatter.html

 

オスグッドは成長痛?

当院を受診される患者さんの多くの方がすでに整形などを受診して「成長痛」という事を言われています。

 

「成長痛」とは何でしょうか?

オスグッドは「成長痛」なのでしょうか?

 

成長痛というのはあくまでも成長期に多い疾患名を総称した名称なので正式な病名ではありません。(おそらく成長痛の定義ははっきりと決まっていません。)

そういった意味ではオスグッドも成長痛の1つなのかもしれません。

しかし「成長期だから痛みが出る」というものではありません。

整形や接骨院でそういった説明を受けた方もみえるかもしれませんが、成長期という事が理由で痛みが出るのだとしたら、全員が痛みが出るはずです。

 

あくまでも成長期の骨が完成されていない時期に悪い体の使い方を続けてしまう事で過度のストレスが加わり痛みが出たり、変形してしまうという事です。

オスグッドになってしまう悪い体の使い方とはどのような事か、なぜそうなってしまうのかを次から説明していきたいと思います。

 

オスグッドになりやすい姿勢

オスグッドになりやすい姿勢というのがあります。それがスウェーバック姿勢です。ここではスウェーバック姿勢とはなんなのか。

スウェーバック姿勢がオスグッドにどのような影響があるのかを説明していきたいと思います。

 

スウェーバック姿勢

スウェーバック姿勢というのは簡単に言うとお腹が前に出て、背中が丸くなったこのような姿勢です。

 

これを少し細かく説明すると本来前に傾いている(前傾)はずの骨盤が後ろに傾いてしまう(後傾)事で骨盤が前方に押し出されて、そのバランスを取るために背中が丸くなった姿勢になります。

この姿勢になるとオスグッドになりやすくなる原因が2つ。

 

1つは骨盤が後傾することで太ももの筋肉が上に引っ張られてしまい、脛骨粗面に引っ張る力が加わるという事。

 

もう1つは後方重心(踵重心)になり上半身が後ろに傾くようになるため、身体を支えるために太ももの前の筋肉が働いてしまう事です。

この太ももの前の筋肉というのが脛骨粗面に付着する「大腿四頭筋」になります。

 

つまりスウェーバック姿勢になると立っているだけでもこの筋肉を使っていることになるので、常に脛骨粗面には牽引ストレスが加わることになります。

 

スウェーバック姿勢の人のジャンプ動作

スウェーバック姿勢になると通常の状態でも四頭筋に負荷がかかるという事は説明しましたが、それだけではありません。

スウェーバック姿勢になると体の使い方も悪くなり、さらに四頭筋への負担が大きくなります。

ここではそれをジャンプ動作で説明していきたいと思います。

 

正しいジャンプ動作はしゃがむ時に膝を前に出さずに、股関節を曲げて上半身が前に倒れるようにしゃがみます。

この方法だと太ももの筋肉はあまり使わずにお尻の筋肉でジャンプが出来ます。

 

しかし、スウェーバック姿勢の人はしゃがむ時に股関節があまり曲がらないため膝を前に出してしゃがもうとします。

 

大腿四頭筋というのは膝が曲がった状態で踏ん張ろうとしたときに一番力を発揮します。(しゃがむ時や階段を上ろうとする時など。)

そのため、必要以上に膝を曲げてしゃがもうとすると太ももの前に余計な力が入ってしまい痛みが出てしまうという事です。

 

スウェーバック姿勢の原因

このスウェーバック姿勢にも原因があります。

今回はその中でも特に多い股関節と前胸部の原因を説明していきたいと思います。

 

骨盤が後傾して猫背になっているのか、または猫背になったから骨盤が後傾してしまっているのか、それは実際に見てみないと分かりませんが、ほとんどの人が両方に問題があります。

 

スウェーバック姿勢の原因 股関節編

スウェーバック姿勢というのは「骨盤が後ろに傾く」という説明をしましたが。骨盤の傾きというのは股関節に大きく関係します。

股関節の柔軟性が低下することで骨盤が後傾してしまうのですが、その原因となる筋肉がお尻の筋肉です。

このお尻にある「大殿筋」や「中殿筋」という筋肉が硬くなると骨盤を後傾してしまいますし、股関節が曲げにくくなるのでしゃがむ時に膝を大きく曲げることになります。

 

その為、この股関節の柔軟性は必ずチェックする必要があります。

 

スウェーバック姿勢の原因 前胸部編

次にスウェーバック姿勢になりやすい原因は猫背にもあります。

 

猫背というのは背中が丸くなるというイメージはあると思いますが、言い方を変えると背中が後ろにいくことになります。

背中が後ろにいくと後方重心になり、四頭筋の負担が増えてしまいます。

この猫背の原因を作る筋肉の1つが大胸筋と呼ばれる筋肉です。

この筋肉の柔軟性を改善することで胸が広がり、猫背が改善されていきます。

 

スウェーバック姿勢、オスグッドの改善方法(筋膜リリース)

 

ここからは簡単にできる大殿筋や前胸部の柔軟性を改善させる筋膜リリースの方法を説明していきます。

 

大殿筋、中殿筋の筋膜リリースの方法

大殿筋、中殿筋という筋肉はお尻に幅広くついています。

この筋膜のリリース方法は可能であれば筋膜リリース用のボール、なければテニスボールや野球ボールを使用して仰向けで寝て、お尻の下にボールを置き体重を少しかけてお尻を横に動かします。(写真は体を起こししていますが、寝た状態でも大丈夫です)

少し上の腰に近い部分をほぐしていくとより効果的です。

3分~5分ほどを目安に転がしてもらうとしっかりとリリースされて、柔軟性が改善されます。

ボールは硬い方が効果が大きいですが、その分痛みも強くなるので痛みに合わせて選んで頂いて大丈夫です。

 

大胸筋の筋膜リリースの方法

大胸筋という筋肉は胸の前にある大きな筋肉になります。

この筋肉は身体の前面にあってやりやすいので、ご自身の手でも十分リリースが出来ます。

左の大胸筋をリリースする場合は右手で鎖骨の下あたりをグリグリとほぐしていきます。

 

手でやりにくければボールをもって少し押さえながら転がしても構いません。

これも少し痛みを感じるぐらいがちょうどいい強さです。

上手にリリースできると少しずつ自然と胸が張れるようになります。

 

最後に

今回はオスグッドの概要から原因、治療法の一部を書いていきました。

もちろんこれが全てでは無いですが、今回の治療法を継続して頂くだけでもかなり痛みが減る方が多いと思います。

そして、オスグッド以外にも膝前面の痛み(ジャンパー膝、膝蓋靭帯炎、膝蓋大腿関節症、シンディング ・ラーセン・ヨハンソン病など)の原因は今回と似たようなケースが多いのでこれらの疾患にも使えると思いますので試してみてください。

 

ただオスグッドのような症状でも、実はオスグッドではない痛みもありますので、あまり改善されないようなら専門家に相談してもらうことをお勧めします。

 

オスグッドは僕が病院勤務時代に自信を持って治せるようになった最初の疾患なので今回の事が分かっていれば、実はそれほど難しい痛みではありません。

それを「成長痛」と言われて我慢をしていたり、整形や接骨院をいくつも通った学生を見るともどかしい気持ちになります。

そういった学生を少しでも減らしたり、早期の競技復帰の役に立ちたいと思っているので、少しでもそのお役に立てれば幸いです。

 

 

本日は長文を最後までお読み頂き本当にありがとうございます。

 

柔道整復師  服部 耕平

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