「変形性股関節症」と言われて、歩行時の股関節外側の痛みでお困りの方へ。
こんにちは。
愛知県豊明市にある、HK LABOの服部 耕平です。
現在までに整形外科専門病院、デイサービス、トレーナー活動で様々な痛みでお困りの方の施術をさせて頂きました。
姿勢や歩き方などの動作から一人一人の方の痛みに合わせた治療をおこなっております。
今回は変形性股関節症の歩行時痛に関しての原因と治療法を解説していこうと思います。
変形性股関節症は「体重」「加齢」「運動不足」が原因と言われたり、骨が擦り減っているから仕方がないと諦めている人もいると思います。
もちろんそれらが無関係というわけではありません。しかし根本的な原因ではないと考えています
もし体重が原因であれば太っている人はもっと変形性股関節症になってもおかしくないと思います。
変形性股関節症になる人は高齢の方だけではなく40代、50代の人もいます。
運動をしている人でも変形性股関節症になる人もいます。
こういったことがある以上、先ほど挙げたような要素は変形性股関節症の根本的な原因ではないと考えています。
今回は
☑ 変形性股関節症と診断を受けた。
☑ 歩行時に股関節の(前方)外側に痛みが出ている。
☑ 手術後も痛みが続いている。
☑ 変形性股関節症と言われ、車の乗り降りなど股関節を曲げる動きで痛みが出る。
☑ 靴下を履くような動きがやりずらくなっている。
このような症状があり、治療法でお困りの方のヒントになるように解説をしたいと思います。
Contents
股関節の構造
最初に股関節の構造を簡単に説明していきます。(治療法のみ知りたい方はこちら)
股関節は「大腿骨」を言われる太ももの骨と「骨盤」で構成されます。
大腿骨の上部はボール状になっていて、骨盤はそれを受けるように丸いくぼみになっています。
大腿骨が球状になっている事で股関節は可動範囲が大きく自由度の高い関節になります。
変形性股関節症ってなに?
変形性股関節症は股関節のクッションの役割をしている軟骨が擦り減り、臼蓋と呼ばれる骨盤側の受け皿の部分や大腿骨側の骨頭と呼ばれる先端の部分が変形することで痛みや可動域の制限を引き起こす疾患のことを言います。
(画像引用 公益社団法人 日本整形外科学会HP https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/hip_osteoarthritis.html)
「臼蓋形成不全」といって生まれつき骨盤側の受け皿の臼蓋と呼ばれる部分が浅くなっている方など構造的に問題がある人に起きやすいとですが、最近では構造的な問題が無く原因が不明(一次性股関節症)のケースも増えていると言われています。
(画像引用 公益社団法人 日本整形外科学会HP https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/hip_osteoarthritis.html)
症状は?
主な症状としては関節の痛みと可動域の制限です。
当院でも一番多い訴えとしては歩行時の痛みです。
歩いた時に股関節の付け根や外側に痛みが出ることが多いです。
他にもしゃがむ時の痛みや立ち上がる時の痛み、車の乗降時の痛み、股関節が曲げずらくなって爪切りや靴下が履けなくなってきた、脚が開かなくなったなどの症状があります。
原因は?
冒頭にも書きましたが、変形性股関節症は「体重」「加齢」「運動不足」が原因と言われやすいですが、今回はそういった内容ではなく、根本的な原因を説明したいと思います。
先ほどお話しした臼蓋形成不全は骨頭からかかる圧力を狭い面積で受け止める事になるので、通常の広い面積で受け止めるのに比べると圧力が集中するため、変形しやすい原因にはなると思います。
しかし、臼蓋形成不全の方でも変形性股関節症にならない方もみえます。
逆に臼蓋形成不全が無く臼蓋が正常の場合でも変形性股関節症になる方もみえます。
太っている人でも変形性股関節症になる人もいれば、ならない人もいる。
臼蓋形成不全でもなる人、ならない人がいます。
もしこれらの事が根本的な原因だとすれば100%とは言わなくても、これらの条件に当てはまる方のほとんどが変形性股関節症になると思います。
もちろん臼蓋形成不全同様、体重が重い方の方が関節の負担が増えることを否定しているわけではありません。
この重力下で生活をしている限り、体重が軽い方が関節の負担が減ることは確かだと思います。
しかし、前述したようなことがある以上は根本的な真の原因は他にあると考えています。
そういった方の本当の原因はどこにあるのかを説明したいと思います。
歩き方と関節の硬さ
では、変形性股関節症になる原因はどこにあるのでしょうか。
それは歩き方にあります。
歩き方というのは人それぞれ違い、歩き方によって負担のかかる部位も変わります。
重力下で生活をしている以上、立っているだけでも下肢(股関節、膝、足首など)の関節には荷重が加わります。
それ自体は全ての人が同じ条件なのですが、歩き方のクセがあったり、左右のバランスが崩れることで特定の部位への負担が増えることがあります。
変形性股関節症の方はその荷重のストレスが股関節に集中してしまうような歩き方になっています。
その上で臼蓋形成不全や体重の増加などがあれば、さらに股関節への負担が大きくなる要素にはなるので変形性股関節症にはなりやすくなります。
変形性股関節症の方の多くは歩き方のクセを周りの方から指摘をされたり、ご自身でも気づいている人も多いと思います。
歩き方のクセというのは骨盤が揺れたり、びっこひくような歩き方になったり、身体が大きく横に揺れたりといったことですね。
痛いから歩き方が悪くなったと思われているかもしれませんが、実は先に歩き方のクセが先に出てきていて、その後に痛みが出ていることの方が多いと思います。
痛みがあることでかばおうとして、さらに歩き方のクセが強くなるという悪循環にもなります。
変形性股関節症に限らず変形性膝関節症や外反母趾など、骨や軟骨がすり減り変形する痛みの多くは歩き方が関わってきます。
では、その歩き方のクセはなぜ起こるのか。
痛みでクセが出来るわけでなければ何かこれも原因があるはずですよね。
この歩き方のクセの原因の一つに関節可動域の減少があります。
簡単に言うと体が硬くなっているという事です。
例えば正しく歩くためには股関節を前に30度曲げる可動域が必要になります。
しかし、股関節の柔軟性が低下しており股関節の曲げる角度が30度も無いとします。(30度ぐらいあると思う方も多いかもしれませんが、実際「綺麗に」30度脚を前に出せる人は意外と少ないです。)
この場合、どうにか脚を前に出そうと足りない分を骨盤を大きく前に出したり、太ももを捻ることで補おうとします。
どのように補うかは人それぞれですが、これが動きのクセを作ります。
さらに、この関節可動域というのは筋肉や筋膜、靭帯などの軟部組織の影響を受けます。
つまりこのような歩き方のクセの原因は筋・筋膜系の問題という事になります。
では、具体的に変形性股関節症の方はどのようなクセがある人になりやすいのか、それはどこが硬くて起こるのかを説明したいと思います。
変形性股関節症の方の歩き方
変形性股関節症の方の歩き方の特徴は2つあります。
1つは痛い脚を前に出すときに骨盤が極端に下がる動き。
2つ目は痛みのある方の脚が後ろにいく時(反対の足を前に出す時)に骨盤が後ろに引っ張られる動きです。
なかなか自分では分かりづらいので、足が着いた瞬間に痛みが出る人は前者のクセが強いと思います。
脚が後ろにいき足を離そうとするタイミングで痛みが出るは後者のクセが強いと考えておおよそいいと思います。
これによって、治療の内容が変わるのでここで一度確認してみて下さい。
足を衝いた瞬間に痛みが出る方
足が地面に付いた瞬間に痛みが出る方は、歩く時に骨盤が下がる方が多いです。
もう少し細かく説明すると、右の股関節に痛みがある場合に右脚を前に出そうとあげた瞬間に右の骨盤が下がるという事です。
骨盤が下がる人は落下するように足を地面につけるため、地面からの反発を強くもらうことになります。
地面から受けた衝撃を本来は足首、膝、股関節で吸収するのですが、足首や膝関節の硬さがあるなどの理由で、変形性股関節症の人はその衝撃を股関節で受け止めてしまいます。
それにより上半身の重みと地面から衝撃を股関節で受け止め、骨が強くぶつかることになります。
長年にわたり歩くたびに骨盤と大腿骨をぶつけていることになるので次第に変形や痛みが出てくるという事です。
なぜその歩き方になるの?治療法は?
ではなぜそのようなクセが出来てしまうのか。
これは筋肉が硬くなることで股関節の可動域の低下・柔軟性の低下によって正常の動きが出来なくなることが原因です。
意識的に治すことも出来ないとは言いませんが、歩き方を意識しても正直5分も持たないと思います。
その為、可動域の制限になっている原因を取り除いて、自然と歩き方が変わるような治療が根本治療になります。
今回の場合は太ももの裏側にある「大内転筋」言われる筋肉の硬さが問題になります。
この筋肉は太ももの内側にあります。
ここの筋肉が硬くなることで脚を前に出そうとした時に骨盤を一緒に引っ張ってしまい、骨盤が下がる原因になります。
この筋肉をローラーでほぐす場合は太ももの内側にローラーを置きます。
この状態で太ももを動かしてローラーをゴロゴロと転がすことでこの筋肉がほぐれます。
この筋肉はローラーで圧がかけにくい場所にあるので少し強めに体重をかけて転がすのがポイントになります。
個人的にはこの筋肉は手でもほぐせるのでこの方法もおすすめです。
ほぐしたい方の膝を曲げて胡坐をかくように横に倒します。
この状態で内ももにあるゴロゴロする筋肉を手で横断するようにほぐしていきます。
前の方には「恥骨筋・長内転筋」という筋肉があるのでこれと触り分けるのが少し難しいですが、より内側もしくは少し後方にあるという事をイメージしてもらうと良いと思います。
どちらも3分前後を目安にほぐして頂くと良いと思います。
コリコリと硬い部分や痛みの強い部分は硬いことが多いのでその辺りを中心にほぐしてみて下さい。
こちらのパターンの痛みの方は太ももの外側にある外側広筋という筋肉も一緒に硬くなっている可能性も高いです。
その為、写真のように太ももの外側も半分ぐらいの時間で良いのでほぐして頂くと良いと思います。
反対の足を前に出すときに痛みが出る方
同じく痛みがあるのが右足という前提で説明しますが、今度は逆に左足を前に出す時(右足を後ろに下がるとき)に痛みが出るという方です。
文章での説明が少し難しいですが、こういった方は右脚を後ろに伸ばすような動きがうまく出来ません。
この動きは股関節の動きになります。
歩く時にはこの動きが必要なのですが、この動きが上手にできる方は歩く時に股関節の動きで脚を後ろに伸ばすことができます。
しかし、この動きの可動域が少ない人は股関節の動きだけでは足を後ろに伸ばせないので、骨盤を使って(具体的には骨盤を後方に回して)足りない分を補おうとします。
正常であれば骨盤の臼蓋の中を大腿骨の骨頭の部分が綺麗に回転しますが、股関節の可動域に制限がある人は綺麗に回転できないため、同じ場所がぶつかっている時間が長くなります。
これが一定の部位に過剰にストレスが加わり軟骨や骨が変形する原因になります。
なぜその歩き方になるの?治療法は?
ではなぜそのような歩き方になってしまうのでしょうか。
こちらも筋肉の柔軟性の低下による可動域の制限が関係しているのですが、このケースの場合は股関節の内側にある「内転筋」という筋肉が関わってきます。
この筋肉は股関節の内側の比較的前方についています。
この筋肉は足を後ろに伸ばすような動きの制限になるため、硬くなると股関節を後ろに伸ばせなくなります。
(画像は大内転筋という別の筋肉になってしまいますが、このように制限がかかります。)
その為、先ほど説明した骨盤の動きを減らすためにはこの筋肉の柔軟性を改善する必要があります。
改善方法としては、恥骨筋はこのように股関節の付け根近くにある筋肉になりますので、座った状態で脚を広げて内ももの上の方を手でほぐしていきます。
先ほどの大内転筋と似たようなほぐし方になりますが、大内転筋よりも前(表層)にあるので、前の方から押さえてみて下さい。
ローラーでもほぐせない事はないですが、ローラーは付け根近くはほぐしにくいので、これも触れる方は手でほぐして頂く事をお勧めします。
これも3分程度を目安にほぐして頂くと良いと思います。
最後に
今回は変形性股関節症の原因と治療法について説明しました。
骨の変形と聞くともう治らないと不安になると思いますが進行の度合いにもよっては、リハビリだけでも十分に痛みは取り除けます。
変形した骨を元に戻すことはできませんが、痛みを取って、関節の動きを正常に戻すことで進行を防ぐことは出来ます。
整形などではある程度変形していてリハビリの効果が出ないと、手術の話をされる事がよくありますが、手術を希望しない方はこのような治療方法もあるという事を知って頂き、一つの選択肢として考えて頂けると良いと思います。
また手術後も同じような痛みに悩まされている方は、今回説明したような歩き方や関節の動きを正常に戻すようなリハビリが必要かもしれません。
手術が良いとか悪いという事ではなく、手術で治療は終わりではなく、やれることはたくさんあるという事です。
それを知らずに痛みの改善を諦めることは、もったいないと思い今回このような記事を書きました。
これが変形性股関節症の治療の全てではありませんが、この記事を読んでいただいた方の痛みが少しでも軽減してお役に立てれば幸いです
本日は長文を最後までお読み頂き本当にありがとうございます。
柔道整復師 服部 耕平