歩いた時の足裏の痛み「足底腱膜炎・足底筋膜炎」でお困りの方へ。
こんにちは。
愛知県豊明市にある、HK LABOの服部 耕平です。
現在までに整形外科専門病院、デイサービス、トレーナー活動で様々な痛みでお困りの方の施術をさせて頂きました。
姿勢や歩き方などの動作から一人一人の方の痛みに合わせた治療をおこなっております。
さて、今回はアスリートから一般の方まで幅広く悩まされる「足底腱膜炎」について書いていこうと思います。
当院に来院される足の疾患では、外脛骨障害か、この足底腱膜炎が一番多いと思います。
(有痛性外脛骨・外脛骨障害に関してはこちら ⇒ 有痛性外脛骨・外脛骨障害でお困りの方へ。 )
足の裏の痛みの事を調べた事がある方はこの足底腱膜炎という言葉を一度は目にしたのではないでしょうか。
☑ 起床時に歩くと足の裏に痛みが出る
☑ 走ると足裏に痛みが出る
☑ 立ち仕事をしていると足裏に痛みが出る
☑ 足裏が突っ張った感じがする
このような症状でお困りの方は足底腱膜炎かもしれません。
当院に受診される方の中には整形や接骨院、治療院ですでに治療をしたけど改善しないという方もおみえになります。
その中には足の指の力を鍛えるためにタオルを指でつかむ「タオルギャザー」というトレーニングをしたり、足裏の足底腱膜をゴルフボールでほぐすような治療をされてきた方が多くみえますが、なぜそれでは良くならないのか、というところから足底腱膜炎になぜなるのか、という事を説明していきたいと思います。
Contents
足底腱膜って何?
足底腱膜というのは足の裏に踵部分からつま先に張っている膜状の組織になります。
足のアーチを保つ機能や正しく歩く補助をしてくれる組織であり、これらは「トラス機構」と「ウィンドラス機構」と呼ばれ、重要な役割を担っています。
トラス機構とは
トラス機構というのは足に荷重が加わった際にアーチの弾性によって衝撃を吸収する機能のことを言います。
足底腱膜は足のアーチ構造を足底で支える機能がるため、荷重がかかった際に足底腱膜の張力を利用してアーチが下がりすぎないようにブレーキをかけてくれます。この張力によって歩行時などの衝撃を吸収して体への負担を減らしてくれます。
しかし、何らかの理由でこの機能が正常に働かないと足底腱膜に過度な引き伸ばされ(伸張ストレス)うまく力を吸収できずに、膝、股関節、腰に衝撃が伝わり痛みや痺れ、張りの原因もなります。
ウィンドラス機構とは
足底腱膜というのは足の指を反らした時(背屈)に引き伸ばされ緊張して固くなります。
これを利用して歩行時に体重が前方に移動するにつれて指が反っていきます(背屈)。それに伴い、足底腱膜が緊張して足のアーチが上がると同時に安定性が増すことで、踵が上がりやすくなります。
このような歩行時の足部に安定性を高めて、推進力の補助をする機能を「ウィンドラス機構」と言います。
足底腱膜炎とは
歩行時やランニングの際に、足底腱膜に過度な牽引ストレスや圧迫ストレスが加わり足底腱膜に痛みが出ます。
痛みの部位は足底の後内側、中央、親指の付け根などが主に挙げられます。
起床時の歩き初めの痛みが代表的な症状ですが、立ち仕事などで夕方になるにつれて徐々に痛みが増してくる方もみえます。
ピーンと突っ張ったような痛みが出るのも特徴です。
レントゲンなどの画像では骨棘と言って、骨が出っ張ったような変形をしている場合もあります。
個人的には変形しているから痛みが出ているというよりは、力学的なストレスが加わることで痛みが出ているので、骨棘があっても痛みは改善していきます。
なぜ足底腱膜炎になるの?
足底腱膜炎になる原因で多いのが「偏平足」です。
偏平足になるとアーチが潰れて足底腱膜が通常よりも強く引っ張られます。その過剰な牽引力こそが足底腱膜炎の痛みの原因になります。
ではなぜ、同じ足底腱膜炎でも痛みの出る部位が違うのか。それは人それぞれの歩き方のクセが関係しています。
これは歩行時にどの部分に体重が長く乗っているかによって痛みの出る部位が変わってきます。
一番多い部位は足底の後内側の踵部分になります。
これは偏平足の方で重心が後方にあるため、歩行時に体重が前方に移動できなくなり、踵が持ち上がらずに足底腱膜炎後方部分に過度な伸張ストレスが加わることで起こります。
逆に前方の親指の付け根付近で痛みが出る方は踵は上がるけど、その時に体重移動が停滞するような方に起こりやすいです。
こういった足底腱膜炎というひとくくりにしてしまうのではなく、足底腱膜炎の中でもどの部位に痛みが出ているのか、体重移動にどのような特徴があり、なぜそれが起こるのかという事を原因を細かく分析する必要すると原因がみえてきます。
ほぐしても効果が出ないのはなぜ?
足底腱膜炎と診断を受けた方の中には足の裏をゴルフボールなどを踏みつけてほぐすように説明を受けた方もみえると思います。
これは足底腱膜炎の原因が足底腱膜自体の硬さだと思われているため、こういったリハビリをするところが多いのですが、正直、このリハビリで症状が改善されている方は少ないと思います。
先ほども書いたように足底腱膜炎は足底腱膜が引っ張られることで痛みが生じます。
足底腱膜に限ったことではありませんが、基本的に引っ張られやすい部位というのは柔らかい部分になります。
もうすでに柔らかいんです。
柔らかくなっているために引っ張られているのですが、その部分をほぐしてさらに柔らかくするとどうなるでしょう。
足裏の支えが弱くなり、さらに引っ張られやすくなります。
そうなると牽引力が強くなり治すどころかさらに痛みが強くなる可能性があります。
こういった理由で足裏をほぐすだけではあまり効果が出ないことが多いのです。
じゃあタオルギャザーはなんで効果が出ないの?
先ほどと反対に足裏の筋肉をうまく鍛えることができれば支えが強くなり、足のアーチが低下しにくく、足底腱膜炎の痛みが減るという理由で足の指でタオルを引き寄せるリハビリ「タオルギャザー」の説明を受ける方も多いと思います。
この理屈自体はいいと思うのですが、大切なのは足底の筋肉を単独で動かすことはかなり難しいという事です。
指を曲げる筋肉は足の裏だけではなくふくらはぎにもあります。
ほとんどの方は自然と指を曲げるとこのふくらはぎの筋肉を使って足の指を曲げます。
この筋肉は足のアーチを高める効果としては弱いので、この筋肉をいくら鍛えても痛みは減りません。
これがタオルギャザーで改善しない理由になります。
偏平足の原因
では、足底腱膜炎の原因となる偏平足にはなぜなるのでしょうか。
これも様々な理由がありますが、今回は「足首の硬さ」・「骨盤の傾き」と偏平足の関係を説明していきたいと思います。
偏平足と足首の硬さの関係
足首というのはこのようにスネの骨(脛骨と腓骨に挟まれていますがスネの骨とさせて頂きます)と距骨という足首の中央にある骨から構成されています。
足首の柔軟性に問題が無い方はアキレス腱のストレッチのようにスネの骨を前に傾けた際に、背屈と言ってスネの骨が綺麗に距骨の上を滑り前方に倒れます。
しかし足首の硬さがあるとこの動きをしようとしたときにスネの骨がうまく前方に倒れません。
その倒れない分を内側に捻じることで補おうとします。
スネの骨が内側に捻じれるとその下にある距骨も同時に内側に捻じられさらに下方に落ち込みます。この距骨の落ち込みこそが内側アーチの低下につながります。
これによって偏平足になり足底腱膜に伸張ストレスが加わります。
これが足底腱膜炎の原因としては一番多いように感じています。
偏平足と骨盤の傾きの関係
足底腱膜炎の原因には偏平足が関わっていることが多いという事を書いてきましたが、偏平足の原因は足だけというわけではありません。
ここでは骨盤の傾きと偏平足の関係について書いていきます。
踵重心が偏平足の原因に
正しい姿勢で立っていれば体重は足の中央にかかりバランスよく筋肉が使われ、筋肉の作用で足のアーチを保つことが出来ます。
しかし、姿勢が悪くなり重心の位置が後方に、つまり踵重心になると足底の筋肉が使われなくなります。
短時間であればそれほど問題ないのですが、姿勢というのは長年の積み重ねなので、悪い姿勢が続けば続くほど筋力が低下していき、次第に足のアーチは下がっていきます。
踵重心が偏平足になる理由はもう一つあります。
踵重心になると体重がこの距骨というスネの骨の真下にある距骨という骨にかかります。
正常であれば距骨よりやや前方に体重がかかり足全体で分散しながら体重を支えるのですが、後方重心になるとこの骨だけで体重を支えなければいけなくなります。
そうなると体重や重力によって、この距骨が沈んでしまい偏平足になるという事です。
この踵重心の原因の1つが骨盤の傾きにあります。
正常であれば骨盤というのは、前傾と言ってやや前に傾いています。(前傾)
しかし、日常的に悪い姿勢が続くと骨盤は次第に後ろに傾いていきます(後傾)。
骨盤が後ろに傾くというのはそのまま体の重心も後ろに移動することになるので、踵重心の原因になるということです。
このように足というのは全身からの影響を受ける部位になるので、骨盤や上半身(猫背)からも原因を探していく必要があります。
足底腱膜炎の治療法
ここからはどうしたら痛みが改善するの?という疑問に対して、上で説明した足首の問題の場合と骨盤後傾での後方重心が原因の場合に分けて説明したいと思います。
足首の硬さが問題の場合の治療法
足首の硬さが原因の場合は外くるぶし後方の腓骨筋という筋肉をリリースする事をお勧めしています。
足首の硬さを改善するためにはアキレス腱のストレッチが思いつく方もみえるかもしれませんが、この筋肉はアキレス腱のストレッチでは伸びにくい部分になるので、直接ほぐすことをお勧めします。
写真のように外くるぶしの後方にコロコロとする筋肉がありますので、この部分を指で押さえて前後方向に動かしながらリリースしていただくと良いと思います。
最初は1分程度から始めて、出来るようになれば3分程度やって頂くと良いと思います。
筋膜リリースのローラーをお持ちの方はローラーでリリースして頂いても大丈夫です。
これらがうまく出来ると偏平足が少しづつ改善され、足底腱膜炎の痛みも減ってくると思います。
骨盤後傾が問題の場合の治療法
次に骨盤後傾が問題の場合の治療法を説明していきたいと思います。
問題が骨盤ににあるかのチェック方法
治療法の前に原因が骨盤にあるのかどうかの簡単なチェック方法を説明したいと思います
仰向けで寝た状態で膝を抱えて股関節を曲げてみて下さい。
これを両方やって頂いて股関節が曲がりにくい方、もしくは股関節前方に痛みや詰まり感(何か挟まってこれ以上曲げると痛いといった感じですね)がある方と足底腱膜炎の痛みのある方が一致しているかどうかです。
単純に股関節の柔軟性の確認ですが、曲げにくい方と痛みがある方が同じの場合は骨盤が原因の可能性が高くなります。
骨盤が原因の場合の治療法
先ほどのチェック方法で骨盤が原因となる場合にはお尻の筋肉・筋膜をリリースしていく必要があります。
大殿筋、中殿筋と言われるような筋肉・筋膜をリリースしていきます。写真の赤丸の部分ですね。
仰向けで寝た状態でこの部分に筋膜リリース用のボール、なければテニスボールや野球ボールを使用して仰向けで寝て、お尻の下にボールを置き体重を少しかけてお尻を横に動かします。(写真は体を起こししていますが、寝た状態でも大丈夫です)
先ほど同様に1分ほどから始めて、3分程度出来るようになるとしっかりとリリースされて、柔軟性が改善されます。
リリース後は先ほど度同じように膝を抱えて股関節を曲げて股関節の曲がりやすさを確認してみて下さい。
上手にリリースされていると股関節が曲げやすくなったり、詰まり感が減るはずです。
そしてリリースされると骨盤の傾きが前傾方向に変わるため、荷重の位置が変わり次第に足底腱膜炎の痛みが減ってきます。
よくある質問コーナー
Q 足底腱膜炎の原因は靴にあるっていうのは本当?
靴にあること「も」あります。しかし、個人的には完全に靴だけが原因で足底腱膜炎になるという事は少ないと思っています。
体が硬くなり歩き方が悪くなることで靴底の外側だけがすり減ったりすることで、靴の形が変わりさらに歩き方が悪くなったり、偏平足になることで痛みを出してしまうといった事の方が多いと思います。
どちらにしても靴の選び方やあまりすり減った靴を履き続けることはよくないという事ですね。
Q なんで起床時の歩き初めに痛みが強くなるの?
これは単純に足底腱膜が起床時は硬くなっているからですね。朝方の気温の低下や数時間動かさないことになるのでその間に硬くなり、朝の痛みが強く感じる方が多いです。
Q 偏平足じゃなくても足底腱膜炎になるの?
なります。一見、足のアーチがしっかりある方でも足底腱膜炎になる方は見えます。特に足底腱膜炎の痛みが足の前の方に出る方に多いように感じています。
これはアーチがつぶれる力だけでなく膝が内側に向いたりすることによって起こる捻じれのストレスも関係しています。
このタイプの足底腱膜炎は原因を見逃されることも多く、治療しても改善しなくて悩まれている方も多いと思いますが、他の部分に原因が隠れている可能性があります。
まとめ
今回は足底腱膜炎について書いていきました。
足底腱膜炎の治療をされている方の中には偏平足が原因と言われて、治療法がわからなかったり、インソールを入れてもらったけど痛みがなかなか改善しないという方もみえると思います。
タオルギャザーなどのように一般的に良いといわれているようなリハビリや治療法では効果が出ない方でも、病態や症状を把握して治療を選択することで改善しない方も諦めないで下さい。
今回は原因と治療法を足首の硬さと骨盤の傾きに分けて書いていきましたが、こういった原因を地道に解決していくことが完治への近道になると思うので、あてはまる方は一度試してみて下さい。
本日は長文を最後までお読み頂き本当にありがとうございます。
柔道整復師 服部 耕平