ヘルニアの痛みをどうにかしたい方へ。
こんにちは。
愛知県豊明市にある、HK LABOの服部 耕平です。
現在までに整形外科専門病院、デイサービス、トレーナー活動で様々な痛みでお困りの方の施術をさせて頂きました。
姿勢や歩き方などの動作から一人一人の方の痛みに合わせた治療をおこなっております。
今回は「腰椎椎間板ヘルニア」について書いていこうと思います。
多くの方がお困りのヘルニアですが、ヘルニアも自然となるわけではなく原因があります。
ヘルニアの原因やその痛みの原因、治療法を知って頂ければと思います。
Contents
腰の構造
最初に腰の構造を簡単に説明したいと思います。
腰というのは「腰椎」という骨が5つ縦に並んでいます。
その腰椎の間には「椎間板」というゲル状(ゼラチンのようにイメージ)の組織が挟まれています。
さらにこの「椎間板」は周りの「繊維輪」と中心にある「髄核」という組織からなり、この腰椎を繋ぐクッションのような役割を果たしています。
そして腰椎という骨は下は骨盤と、上は胸椎と呼ばれる背骨と連結しています。
人間の各関節には「可動性」と「安定性」の関節に分かれていて、可動域のある股関節と胸椎の間に挟まれているため腰椎は「安定性」の関節となっていて下半身と上半身を繋げる重要な役割を担っています。
腰椎椎間板ヘルニアとは
では「腰椎椎間板ヘルニア」とはどういった疾患なのか。それをこの章では書いていこうと思います。
「腰椎椎間板ヘルニア」というのは先ほど説明した椎間板が何らかの原因で変形してしまい、「髄核」が「繊維輪」から後方に飛び出してしまう事を言います。
なぜ痺れや痛みが出るかというと、椎間板の後方には脊柱管という脊髄神経の通り道があります。
椎間板が飛び出ると、この脊髄や脊髄から出ている細かな神経を圧迫するため、腰の痛みや足の痺れが出ると言われています。
(ちなみに当院の考え方ではヘルニアと言われたことがある方でも実際にヘルニアが原因で痺れや痛みの症状が出ている方は少ないと考えています。)
なぜ腰椎椎間板ヘルニアになるのか
では、なぜヘルニアになるのかをここから説明していきます。
よく加齢による変性(変形)と書かれている事が多いですが、年齢を重ねるだけで勝手になるわけではありません。
ヘルニアになる動きや姿勢を長期間続けてしまって徐々になるので、年齢を重ねるにつれてヘルニアの方が多いというだけです。
このヘルニアの人に多い特徴というのは腰の骨が動きすぎているという事です。
腰というのは本来、安定のための関節になるのでそれほど大きく動くようにはできていません。
何らかの理由で本来あまり動かなくてもいい腰椎が過剰に動く事で、間に挟まれている椎間板にストレスがかかり変性してしまうという事です。
腰が動きすぎるという事をもう少し具体的に説明していきたいと思います。
ヘルニアの方は「前屈」という体を前に倒す動作がうまく出来ないか方が多いです。
前屈は腰だけが丸くなるようにイメージですが、この前屈では「股関節」「腰椎(腰)」「胸椎(背中)」がうまく連動して動くことで綺麗に倒すことが出来ます。
先ほども書きましたが腰は安定性の関節であるため本来それほど可動域はありません。
他の「股関節」と「胸椎」というのは可動性の関節となっています。(簡単に言うとよく動く関節ということです。)
その為、前屈の際は股関節が大きく曲がって、腰はあまり曲がらずにその上の背中がまた大きく動いてくれるのが正しい体の使い方になります。
しかし、ヘルニアの方のほとんどがこれが逆転して腰が大きく曲がってしまいます。
股関節が硬くなってうまく曲げられなくなってしまい、その分腰が大きく動き、腰が動いてくれる分背中はあまり動かなくなってしまいます。
人間の身体はどこかがうまく使えなくなると、他でカバーしようとします。今回のケースでは股関節や胸椎の負担を腰が頑張ってカバーしている状態ともいえます。
これを「トレードオフ」と言いますが、身体の事に限らず様々な場面で起きていると思います。
仕事でもAさんが頑張るとBさんはその分仕事が減るし、Aさんがサボるとその分Bさんの負担が増えますよね。体の中でもそういった事が起こっているという事です。
では、腰が動きすぎるとなぜヘルニアになるかという事ですが、今回の動きすぎるという事は良いかえると大きく曲がり過ぎるという事です。つまり腰が丸くなるんですね。
腰が大きく曲がると、腰椎の前方が狭くなり、後方が開くように動きます。言い換えると椎間板の前方に圧迫力がかかり後方に出やすくなるという事です。
これが荷物を持とうとして屈む時、中腰になる時などに毎回この力が加わります。
さらにこのように長年に渡ってこの使い方をしていると日常の立位姿勢や座位姿勢でも腰が丸い状態になります。
そこまでいくと常に椎間板には圧迫ストレスがかかることになるので、次第にヘルニアが出来上がってしまうという事ですね。
このようになんとなくヘルニアになるのではなく、ハッキリとした原因があるということを分かって頂けたでしょうか。
腰のマッサージで治らない理由
どの痛みでもそうなのですが「腰が痛いから腰をマッサージしてほしい。「こっている部分をほぐしてほしい。」と言われる方はとても多いです。
気持ちはとても分かりますが、先ほどの説明で腰をほぐしても改善しない理由が見えてきたのではないでしょうか。
マッサージや筋膜リリースは基本的には動かないところ、固まったところを動きやすくするために使います。
今回の場合は腰はすでに動いているので、ここを緩めてさらに動くようにするとかえって痛みが強くなってしまいます。
今回の場合はリリースをするのであれば、動いていない股関節や胸椎(背中)をリリースして、腰の負担を減らしていく事が大切になります。
腰椎椎間板ヘルニアの痛みの原因は
さらに気を付ける必要があるのは、本当にその痛みや痺れがヘルニアが原因で出ているのかという点です。
これは個人的な経験や感覚的な要素が大きくなってしまいますが、実際にヘルニアによって、もう少し細かく言うと椎間板が飛び出て神経を圧迫することによって出ている、痺れや痛みというのはとても少ないと思っています。
1つに理由としては、神経というのはどこを圧迫されるとどこに痺れが出るという部位がおおよそ決まっています。
人間の身体なので人それぞれ細かな部分は違うという事はありますが、おおよそは決まっていると言われています。
例えば腰椎の3番目と4番目の間の椎間反射が飛び出して神経(L4の脊髄神経根)が圧迫されると太もも外側から膝前方を通ってふくらはぎの内側に感覚障害がおこると言われています。
これが一致している場合(もしくは近い)は原因がヘルニアになっている可能性が高いですが、この感覚障害や痛みが起こる場所と神経が障害されているレベルが一致している事が実際にはかなり少ないです。
ここが一致していないという事は痛みはヘルニアではなく他の原因がある可能性があります。。
さらに「膝蓋腱反射」と言って、正常であれば膝の下の部分(腱)を叩くと膝が伸びるという反射が起こるのですが、ヘルニアで神経が圧迫されているとこの反射が弱くなったり、起きなくなります。
これもヘルニアで神経が圧迫されている場合の症状の1つなのですが、この症状が実際にある方もかなり少ないです。
そして、治療をする前に痛みの部位や痛みの軽減する動きなどを確認していくと、筋肉や筋膜の問題で痛みが出ている事がほとんどです。
確認の方法としては筋肉を一時的に緩めたり、筋膜の捻じれを一時的に戻して痛みの出る動きを行ってもらいます。
それだけではヘルニア自体が戻ることはないのですが、筋肉や筋膜の過剰なストレスを減らすことが出来ます。
それで痛みが軽減するようであれば、痛みは筋・筋膜が原因になっている可能性が高いという事ですね。
このようにヘルニアの診断を受けている方の中にも実は筋・筋膜性の腰痛の方がたくさん隠れているという事です。
これらを見逃されてヘルニアの治療だけを行っても症状は改善していかないので、心当たりのある方は一度次のセルフケアを試してみてください。
腰椎椎間板ヘルニアの施術、リハビリ(筋膜リリース・ストレッチ)
ここからは実際の治療法を説明していきたいと思います。
「なぜ腰椎椎間板ヘルニアになるのか」という項目でも書いたようにヘルニアの原因は股関節や胸椎(背中)の硬さが原因になっている事が多いので、股関節や胸椎の筋膜リリースやストレッチの方法をここでは紹介したいと思います。
大殿筋・中殿筋の筋膜リリース、ストレッチ
大殿筋・中殿筋のリリース方法はオスグッドの時にも紹介しましたが、このお尻の筋肉の柔軟性はどの疾患にも重要になるので何度も出てくると思います。
この筋膜のリリース方法は可能であれば筋膜リリース用のボール、なければテニスボールや野球ボールを使用して仰向けで寝て、お尻の下にボールを置き体重を少しかけてお尻を横に動かします。(写真は体を起こししていますが、寝た状態でも大丈夫です)
3分~5分ほどを目安に転がしてもらうとしっかりとリリースされて、柔軟性が改善されます。
ボールは硬い方が効果が大きいですが、その分痛みも強くなるので痛みに合わせて選んで頂いて大丈夫です。
続いてお尻の筋肉のストレッチの方法ですが、写真のように椅子に腰かけてもらい、伸ばしたい方の足を反対の膝の上に乗せます。
この状態で骨盤を前に倒すように体を倒していくとお尻に伸張感が出ると思うので、伸張感が出たところで10~20秒ほど我慢して筋肉を伸ばしていきます。これを3セット行ってみてください。
無理に体を倒そうとすると腰が丸くなってしまうので、腰ではなく骨盤を倒すことがポイントになります。
胸を張って骨盤を立てるだけでも伸張感が出ると思うので軽く伸張感が出れば大丈夫です。
内転筋の筋膜リリース、ストレッチ
次は内転筋と言われる太ももの内側に付いている筋肉のリリース方法とストレッチを説明していきます。
まずは簡単に手でリリースする方法ですが、内転筋はこのように太ももの内側に付いています。
(引用文献 プロメテウス)
手でリリース場合は開脚してこの筋肉を両手でほぐしていきます。
道具を使う際は「グリッドローラー」や「スティックローラー」がお勧めです。
うつ伏せになってほぐしたい方の股関節を開いて太ももの下にグリッドローラーを入れて転がします。
スティックローラーの場合は内転筋の部分に少し圧迫して転がしていきます。
ストレッチはシンプルに足を開いて行う開脚のストレッチになりますが、この時に片方ずつ行う事をお勧めします。
ベッドでも床でもどちらでも大丈夫ですが、片方の足(股関節)を開きそのまま骨盤を前に倒していきます。
立った状態で行っても大丈夫です。(右内転筋のストレッチ)
この状態で内ももに伸張感を感じたら10~20秒ぐらい我慢して伸ばしていきます。このストレッチも3セット程行うと良いと思います。
お尻のストレッチでも言いましたがポイントは腰ではなく骨盤を倒すことです。
この二つのストレッチは骨盤が倒せているかどうかで効果が大きく変わってくるので、骨盤を意識して行ってみてください。
胸椎(背中)の筋膜リリース
最後に胸椎のリリース方法です。
胸椎というのは本来少し丸くなっていますが、背中の筋肉が硬くなってしまうと丸めることが出来なくなり、代わりに腰が丸くなってしまうので、背中の柔軟性も大切になってきます。
背中の筋肉は細かい筋肉がたくさんあるので説明は省きますが、写真のこの辺りの筋肉になります。
「グリッドローラー」でこの辺りを転がしてもらうと筋肉や筋膜が緩んで胸椎が動かしやすくなります。
この辺りは柔軟性が高まるとスポーツ選手は回旋運動がしやすくなり重心移動もスムーズにできるようになるので治療だけでなくパフォーマンスアップにも繋がります。
最後に
今回は腰椎椎間板ヘルニアの原因や治療法について書いていきました。
僕自身は水泳をやっていて、小学生ぐらいの時に中学生や高校生の年上の人たちがヘルニアに悩まされていたのを覚えています。
その時はヘルニアって重大な病気のように感じていたし、チームの中にもそのような雰囲気があったと思います。
ヘルニアの選手は練習を休んだり、同じ練習が出来なかったり、おそらくコーチもどうしたらいいのか分からなくてそのような雰囲気になっていたんだと思います。
しかし、この業界に入って治療の勉強していくと、得体のしれない病気ではなく力学的なストレスでしっかりと説明が出来る疾患だということが分かりました。
もっと言うとそれほど怖い疾患ではないという事を知りました。
それを知るとなおさらヘルニアで悩んでいる方にこういった事を知って頂いて、治療のヒントになったり治療に足を運ぶきっかけになればと思い今回はヘルニアをテーマに書いていきました。
本日は長文を最後までお読み頂き本当にありがとうございます。
柔道整復師 服部 耕平