研究所

LABO

糖尿病の運動は「強度と頻度」が重要|弱すぎ・強すぎが逆効果になる理由

このブログは、
糖尿病の方に向けた「運動の考え方」シリーズの第3回です。

これまでの記事では、次のような内容をお伝えしてきました。

まだ読んでいない方は、
先にこちらを読んでいただくと、今回の内容がより理解しやすくなります。

※時間がない方は、このまま読み進めても問題ありません。

 

その上で今回は、
「どこを使うか」という視点から、
糖尿病の運動療法を考えていきます。

糖尿病の運動では、
下半身をどう使うかが、血糖の安定に大きく関わってきます。

「毎日歩いているのに、数値がなかなか変わらない」
そんな方にこそ、知っていただきたい内容です。

 

 

なぜ糖尿病の運動で「下半身」が重要なのか

糖尿病の運動療法を考えるうえで、まず押さえておきたいのが
「どこの筋肉を使うか」という視点です。

 

結論からお伝えすると、糖尿病の運動では
下半身の筋肉を優先的に使うことがとても重要になります。

その理由は、下半身には体の中でも特に大きな筋肉が集まっているからです。

太ももやお尻、ふくらはぎといった下半身の筋肉は、
全身の筋肉量の中でも大きな割合を占めています。

筋肉量が大きいということは、それだけ
血糖を取り込める量・貯蔵できる量が大きい
ということでもあります。

 

前回までのブログでお伝えしたように、運動によって血糖は筋肉の中に取り込まれ、
グリコーゲンとして一時的に蓄えられます。

つまり下半身の筋肉をしっかり使えるかどうかは、血糖の「逃げ場」を十分に作れているかどうか、
という点に直結します。

一方で、腕や肩など上半身中心の運動や、軽い体操・ストレッチだけでは、
血糖を受け止めるための「容量」がどうしても小さくなってしまいます。

  • 運動しても血糖の変化が小さい
  • 一時的には下がっても安定しない
  • 数値がなかなか改善しない
糖尿病の運動では、
「たくさん動くこと」よりも「血糖を受け止められる筋肉を使えているか」
が重要になります。

次の章では、なぜ「毎日歩いているのに変わらない」という状態が起こるのか。
ウォーキングだけでは刺激が足りなくなりやすい理由を解説していきます。

 

 

下半身は「血糖をためておける場所」になる

前の章でお伝えしたように、
下半身の筋肉は血糖を取り込むうえでとても重要な役割を持っています。

 

もう一つ、糖尿病の運動を考えるうえで
ぜひ知っておいてほしいポイントがあります。

筋肉は、血糖を一時的にグリコーゲンとして貯蔵できる場所です。

食事によって血糖が上がると、
その糖は血液中にとどまり続けるのではなく、
主に筋肉や肝臓に運ばれて蓄えられます。

 

このとき、
筋肉量が多いほど「血糖の受け皿」は大きくなる
と考えることができます。

反対に、筋肉量が少ない状態では、

  • 血糖を蓄えておける容量が小さい
  • 食後の血糖が上がりやすい
  • 高血糖の状態が長く続きやすい

といった状況が起こりやすくなります。

つまり、
GLUT4を動かして血糖を取り込むことと、
その血糖をためておける筋肉を持つことは、
セットで考える必要があるということです。

ここで大切なのは、


「運動すれば血糖は下がる」だけで終わらせないこと

一時的に数値を下げるだけでなく、
血糖が乱れにくい体の土台をつくることが、
糖尿病の運動療法ではとても重要になります。

その土台づくりにおいて、
大きな筋肉が集まる下半身は、
最も優先して使うべき部位だと言えます。

では次に、
「毎日歩いているのに血糖があまり変わらない」
という方が多いのはなぜなのでしょうか。

 

次の章では、
「弱すぎる運動」ではなぜ足りないのか
という点について解説していきます。

 

なぜ「弱すぎる運動」では足りないのか

「運動はしているのに、血糖値がなかなか改善しない」
そう感じている方の多くに共通しているのが、
運動の強度が低すぎるという点です。

 

もちろん、体を動かさないよりは、
軽い運動でも意味はあります。

 

ただし、糖尿病の運動療法では、

体に“変化を起こす刺激”になっているかどうか
がとても重要になります。

あまりにも負荷が低い運動では、

  • 筋肉がしっかり使われない
  • 血糖を多く取り込む必要が生じない
  • 体が「適応」しようとしない

結果として、
血糖の変化が小さくなりやすいのです。

 

前回までのブログでお伝えしたように、
GLUT4は運動によって細胞表面に移動し、
血糖を筋肉の中に取り込む働きをします。

 

しかしその働きも、

筋肉が「これはエネルギーを使う運動だ」と認識する刺激
があってこそ、十分に引き出されます。

例えば、

  • 息がほとんど上がらない
  • 筋肉に疲労感が残らない
  • 翌日に何も感じない

このような運動ばかりだと、
体は「現状維持で十分」と判断してしまいます。

その結果、

  • 筋肉量が増えない
  • GLUT4の働きも高まりにくい
  • 血糖が安定しにくい

という状態につながりやすくなります。

糖尿病の運動では、
「安全な範囲で、少し負荷をかける」
という視点が欠かせません。

ただし、
ここで誤解してほしくないのは、

「きつければきついほど良い」わけではない
ということです。

 

次の章では、
強すぎる運動がなぜ逆効果になることがあるのか
について解説していきます。

 

なぜ「強すぎる運動」が逆効果になることがあるのか

前の章では、
弱すぎる運動では体に十分な変化が起こりにくい
という話をしました。

 

では反対に、
強ければ強いほど良いのかというと、
糖尿病の方の場合はそう単純ではありません。

糖尿病の運動では、
「強すぎる刺激」がかえって血糖を乱す
こともあります。

強度が高すぎる運動を行うと、
体の中では次のような反応が起こります。

  • 交感神経が過剰に働く
  • アドレナリンやコルチゾールなどのストレスホルモンが増える
  • 肝臓からの糖放出が増える

これらは本来、
「危機的な状況から体を守るため」の反応ですが、
糖尿病の方では血糖を一時的に押し上げる要因になります。

実際に、

  • 運動後に血糖が思ったより下がらない
  • むしろ一時的に上がる
  • 疲労感が強く、翌日までだるさが残る

といった経験がある方も少なくありません。

特に、
普段あまり運動していない方や高齢の方
合併症を抱えている方ほど、
強すぎる運動の影響を受けやすくなります。

また、
疲労が強く残る運動を続けてしまうと、

  • 運動の継続が難しくなる
  • 回復が追いつかない
  • 結果的に運動量が減ってしまう

という悪循環にもつながります。

糖尿病の運動で大切なのは、
「きつすぎず、弱すぎない」適切な負荷
安全に、継続できる形で行うことです。

では、
「適切な負荷」とはどのように判断すればよいのでしょうか。

 

次の章では、
糖尿病の方にとっての“ちょうど良い強度”をどう見極めるか
について解説していきます。

 

「ちょうど良い強度」はどう判断すればいいのか

ここまでで、
弱すぎる運動では効果が出にくく
強すぎる運動では逆効果になることがある
という話をしてきました。

 

では実際に、
糖尿病の方にとって「ちょうど良い強度」は、
どのように判断すればよいのでしょうか。

ポイントは、
数値ではなく「体の反応」で判断することです。

専門的な現場では、
RPE(自覚的運動強度)という考え方がよく使われます。

 

RPEとは、
「どれくらいきつく感じるか」を
本人の感覚で評価する方法です。

  • RPE 9〜10:かなり楽(物足りない)
  • RPE 11〜12:少しきついが余裕がある
  • RPE 13〜14:ややきついが継続できる
  • RPE 15以上:かなりきつい(追い込みすぎ)

糖尿病の運動では、
RPE 11〜13程度を目安に考えることが多くなります。

具体的には、

  • 息は少し上がるが会話はできる
  • 筋肉に使っている感覚がある
  • 終わったあとに「やった感」が残る

このくらいの感覚が、
体にとって適切な刺激になりやすいラインです。

逆に、
息が切れすぎて会話ができない
動作が崩れる
翌日まで強い疲労が残る場合は、
強度が高すぎる可能性があります。

また、
糖尿病の方の場合は、

  • その日の体調
  • 睡眠の質
  • 血糖値の変動

といった要素によって、
同じ運動でも感じる強さが変わる
という点も重要です。

だからこそ、
「毎回同じ強度をやる」のではなく、
その日の状態に合わせて調整することが、
安全で効果的な運動につながります。

ここまでで、
強度の考え方について整理できました。

 

次の章では、
「どれくらいの頻度で運動すればいいのか」
という点について解説していきます。

 

なぜ「毎日やらなくても」血糖は安定するのか

運動についてお話しすると、
「毎日やらないと意味がないのでは?」
と不安に感じる方は少なくありません。

 

しかし、糖尿病の運動療法では、
必ずしも毎日きつい運動を行う必要はありません。

ポイントは、
運動の“頻度”と“回復”のバランスです。

筋肉は、
運動によって刺激を受けたあと、
回復する過程で強くなり、働きが高まります。

この回復の時間を無視して、
毎日同じ強度の運動を続けてしまうと、

  • 疲労が抜けにくくなる
  • 筋肉の回復が追いつかない
  • 結果的にパフォーマンスが落ちる

といった状態になりやすくなります。

特に、
糖尿病の方や高齢の方は、
回復に時間がかかるケースも多いため、
「やりすぎ」は逆効果になりやすい傾向があります。

そのため、
筋トレの頻度は週2〜3回程度でも、
十分に効果を得ることができます。

実際に、

  • 週2〜3回の筋トレ
  • 間の日は軽めの活動(散歩など)
  • 完全に休む日を作ることもOK

このようなリズムの方が、
血糖値が安定しやすく、運動も継続しやすい
というケースは少なくありません。

糖尿病の運動では、
「頑張り続けること」よりも
「無理なく続けられること」
が、
結果的に一番の近道になります。

ここまでで、
強度と頻度についての考え方を整理してきました。

次の章では、
「なぜ管理された環境でのトレーニングが大切なのか」
について解説していきます。

 

なぜ「自己流」ではうまくいかないのか

ここまでで、
糖尿病の運動では

  • 弱すぎても効果が出にくい
  • 強すぎると逆効果になることがある
  • 強度と頻度のバランスが重要

という点をお伝えしてきました。

 

ここで多くの方がつまずきやすいのが、
「自分ではちょうど良いと思っている運動が、本当に合っているのか分からない」
という部分です。

糖尿病の運動は、
「やっているつもり」
「体に合っている」が一致しないことが少なくありません。

自己流で運動を続けている方の中には、

  • 負荷が足りず、体が変わらない
  • 知らず知らずのうちに無理をしている
  • フォームが崩れて関節や腰を痛めてしまう

といったケースも多く見られます。

特に糖尿病の方の場合、

  • 血糖値の変動
  • 合併症の有無
  • 体力や筋力の個人差

などによって、
適切な運動内容が人それぞれ異なる
という点がとても重要になります。

同じ「スクワット」や「歩行」でも、
やり方・回数・スピード・休憩の取り方によって、
体への影響は大きく変わります。

そのため、

糖尿病の運動では、
今の体の状態を評価したうえで、
段階的に負荷を調整していくこと
が、
安全性と効果の両方を高めるポイントになります。

「運動は大切だと分かっているけれど、
これで合っているのか不安」

そんな方ほど、
一度立ち止まって、運動の内容を見直すこと
結果への近道になることも少なくありません。

 

次の章では、
ここまでの内容をまとめながら、
HK LABOでどのようにサポートしているのかについてお話しします。

 

まとめ:糖尿病の運動は「やり方」で結果が変わる

ここまで、糖尿病の方に向けた運動の考え方として、

  • 下半身の筋肉を優先的に使うこと
  • 筋肉は血糖をためておける「受け皿」になること
  • 弱すぎる運動では効果が出にくいこと
  • 強すぎる運動は逆効果になることがあること
  • 「ちょうど良い強度」と「適切な頻度」が重要であること
  • 自己流では判断が難しい場面が多いこと

といったポイントをお伝えしてきました。

糖尿病の運動で大切なのは、
「どれくらい頑張るか」ではなく
「体に合った刺激を、適切に与えられているか」
です。

同じ運動をしていても、

  • 使っている筋肉
  • 負荷のかけ方
  • 頻度や回復の取り方

が違えば、
血糖への影響も、体への負担も大きく変わります。

 

「運動しているのに数値が変わらない」
「このやり方で合っているのか不安」
そう感じている方は、

努力が足りないのではなく、
運動の“方向”が少しズレているだけ

というケースも少なくありません。

HK LABOでは、

  • 今の体の状態の評価
  • 血糖や体力を考慮した運動強度の設定
  • 無理なく続けられる段階的なプログラム

を大切にしながら、
糖尿病の方に向けたトレーニングを行っています。

「頑張りすぎず、でも効果は出したい」
そんな方こそ、
一度、運動の内容を整理してみる価値があります。

もし、
今の運動に少しでも不安や迷いがあれば、
お気軽にご相談ください。

次回予告:
次回は、今回お話しした考え方を踏まえて、
「具体的にどんなトレーニングを、どれくらい行えばいいのか」
実際の例を交えながら解説していきます。

一覧へ戻る