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ランニング後の大腿後面の痛みの評価と治療法

こんにちは。

 

愛知県豊明市にある、HK LABOの服部 耕平です。

現在までに整形外科専門病院、デイサービス、トレーナー活動で様々な痛みでお困りの方の施術をさせて頂きました。

姿勢や歩き方などの動作から一人一人の方の痛みに合わせた治療をおこなっております。

 

Contents

はじめに

 

今回も実際のクライアントさんシリーズです。

まずは今回も歩行動画をご覧ください。

 

 

 

この方は左太もも後面の痛みでお困りでした。

では、なぜ太ももの後ろに痛みが出ていたのかを解説したいと思います。

 

 

今回のクライアントさん

 

この方は38歳の男性、身体を動かすことが趣味(仕事)で普段からランニングをされている方です。

数日前からランニング後の左太もも後面の痛みが気になっていて、段々痛みが強くなってきたため来られました。

週末に連続で20キロ以上のトレイルランがあるのでそこに向けて走れるようにしたいという希望でした。

 

週末に大会があるという事だったので、とにかくこの一回でどれだけ痛みを減らせるか考えました。

0にはできなくてもせめて完走できるようにどうしたらいいか、という事ですね。

 

症状は

 

  • 普段歩行時の太もも後面の鈍痛、重さがある。
  • ランニング後には太もも後面に痛みがある。

 

この二点でした。

 

整形を受診したわけではないので病名などは難しいですが、大腿後面のハムストリングスの負担が増えてるのではないかと考えました。

 

 

 

この部分は整形でも病名がつけにくいと思いますが、坐骨神経痛などの病名がつく可能性がある症状です。

 

では、なぜランニング後に太もも後面に痛みが出るのか原因と治療法を説明したいと思います。

 

 

大腿二頭筋はどんな筋肉?

 

ハムストリングスはこのように太ももの後面についている筋肉です。

大腿二頭筋」「半腱様筋」「半膜様筋」と呼ばれる筋肉を総称してハムストリングスと言います。

 

 

今回の内容では分けて考える必要はないのでハムストリングスとして説明します。

 

 

役割としては

 

  • 膝を曲げる(膝の屈曲)
  • 太ももを後方に伸ばす(股関節の伸展)

 

 

その中でも今回は太ももを後方に引く、股関節の伸展と呼ばれる動きに注目したいと思います。

 

 

なぜ太ももの後ろ人痛みが出るの?

 

ここからはなぜ痛みが出るのかという事です。

 

基本的に筋肉の痛みが出るときは過伸張か過収縮の時に起こります。

今回は脚が後方に行った時に痛みが出るのでに大腿二頭筋が収縮する際の痛みだと考えました。

 

 

逆に過伸張の痛みは前方に振り出した時に痛みが出ます。

 

 

この過収縮の際に考えることは「どこかに邪魔をしている筋肉が無いか」という事です。

 

これが重要です。

 

僕はこれを横向きに寝た状態で太ももを後ろに伸ばして確認します。

 

 

確認したところ内転筋の上部に硬さがありました。

なので、今回は内転筋の筋膜リリースが必要だという評価をしました。

 

 

内転筋の硬さが太もも後面の痛みになる理由

 

内転筋というのは太ももの内側に付いています。

 

 

大きな役割としては股関節を閉じるような動きで使う筋肉ですが、硬くなると股関節の伸展の邪魔になる筋肉でもあります。

 

その中でも特に邪魔になりやすいのは前方についている「恥骨筋」「長内転筋」と呼ばれる筋肉になります。

 

 

 

 

伸展の邪魔になる筋肉があると、太ももを後方に引くのに大腿二頭筋はいつも以上の力を使う必要があります。

内転筋と大腿二頭筋で綱引きをしているような状態です。

 

 

綱引きでは相手が強いほど勝つためにはこちらの力がさらに必要になりますね。

それだけの筋力があれば問題ないのですが、筋力がない場合は今回のように痛みが出ます。

 

じゃあトレーニングで大腿二頭筋を鍛えればいいのでは?と思われる方もみえると思いますが、それも一つの方法だと思います。

しかし、筋力をつけるには少し時間がかかるので、痛みを無くしたいという希望であれば邪魔している筋肉を緩めた方が早いと考えていま

す。

おまけ

 

今回は内転筋が問題でしたが、股関節伸展の邪魔になる筋肉いくつもあります。

例えば「腸腰筋」「大腿直筋」「大腿筋膜張筋」など細かく考えていくと他にもあります。

 

その中でも今回は身体の評価を行い「内転筋」という原因を見つけていますので、太もも裏の痛みが全て内転筋で治るというものではありません。

これは全ての痛みに言える事なのでこのことは念頭に置いてください。

 

 

内転筋の筋膜リリース

 

当院のブログではたびたび出てきますが、それだけ悪さをしやすい筋肉という事です。

逆にこの内転筋をうまく使えるようになれば改善される痛みがたくさんあります。

 

これらを踏まえたうえで内転筋の筋膜リリースの方法を説明します。

まずは改めて内転筋です。

 

 

太ももの内側にありますが、今回は股関節の問題という事で上部に強い硬さを感じました。

この部分はローラーでは筋膜リリースしにくいので手でリリースする事をお勧めします。

 

このようにあぐらのかくように股関節を開いた状態で股関節に近い部分を触ってみて下さい。

 

 

この部分にピンと張った筋肉を感じると思います。

 

これを横断するようにゴリゴリとほぐしていきます。

 

写真は座った状態ですが、完全に寝た状態の方がより分かりやすいかもしれません。

このように筋膜リリースをして緩んでいくと太ももが後方に伸ばしやすくなると思います。

 

 

歩行動画の解説

 

改めて最初に見て頂いた歩行動画を見ていきたいと思います。

 

 

 

細かく見ていくと施術前は脚が後方に伸びると同時に骨盤が後方に回っていると思います。

股関節の伸展可動域が小さいため足を後方に伸ばすために骨盤を回して補っている状態です。

 

伸展可動域が改善されたことで骨盤の回旋量が少なくなり、その上で歩幅が広くなっています。

 

 

施術後には骨盤の動きが小さくなっているのがわかるかと思います。

分かりにくい方は骨盤の高さで比較してもいいと思います。

 

施術後の方が骨盤が高くなっているのが分かると思います。

施術前の方がくるっと後方に回旋している分、骨盤が低くなっています。

 

 

 

さらに分かりやすいように赤線を引いてみます。

 

 

これが股関節伸展が改善されたときによくみられる変化です。

なんとなく治療後の方が姿勢もよく、地面を押せている感じがしませんか?

骨盤がぶれると力も伝わりづらいのでランニングにもいい影響が出ると思います。

 

 

この伸展可動域の改善によりハムストリングスの過収縮も減少すると考えています。

 

治療後は歩行時の鈍痛は無くなったようで、ランニング後に痛みは実際に走らないと分からない事ですが、個人的にはだいぶ減るのでは無いかと思っています。

 

なにより歩きやすくなったと喜んで頂けました。

 

最後に

 

今回はもも裏に痛みのある実際のクライアントさんの紹介、解説を行いました。

 

おそらく整形でレントゲンやMRIを撮影してもはっきりとした原因は見つからないのではないかと思う症例です。

もちろん「画像所見で何もなかったことが分かる。」という事も重要ではあります。

そういったケースは湿布や痛み止めで終わることが多いですが、このように原因は必ずあります。

 

今回の内容で全ての方に効果があるとは思っていませんが、あてはまる人には効果があると思うので一度試してみて下さい。

 

それでも、あまり改善されない方は改善方法は他にもあるので、私たちのようなプロに一度みてもらってください。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

 

服部 耕平

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